慣れない事ばかりで、大変だったな、と思う。
子供達は、前回の学芸会では、あまり緊張しなかったと言っていたので、すっかり慣れたようだ。
学芸会で、披露される作品は評価されることが目的のものでない。
みんなで、創作する楽しさ、大変さを知る。
演技を通じて、自己表現することの喜びや怖れを知ることもある。
作品に真剣に取り組む姿があった。
忘れられない舞台がある。
一昨年に観た、雄勝太鼓(おがつだいこ)の演奏だ。
石巻市の雄勝町の伝統芸能の和太鼓は、震災で流されてしまった。
そのため、廃材のタイヤに、荷造り用のビニールテープを巻き、麺棒を使って演奏したそうだ。
この輪太鼓は、地域の人達をすごく勇気づけた。
日本各地、世界でも、この廃タイヤを使った太鼓の演奏は、披露された。
復興への希望の象徴だった。
私は、学芸会で、この演奏を観ることができた。
子供達が、入場してきた瞬間、場の空気が変わった。
真っ直ぐに前を見つめる、真剣に引き締まった顔があった。
太鼓をひとうち、ひとうちする音が力強く、響いてくる。
彼らの精神が音に乗り移って、伝わってくるようだった。
表現というのは、技術だけじゃない。
喜怒哀楽、感謝の気持ち、愛…胸の奥からの言葉が空間に流れ出し、音に乗り、伝わってくるから、心を揺りうごかされる。
小さな舞台でのパフォーマンスだった。
それは、私の心にとても深くのこった。
一方、より大きな舞台でパフォーマンスする人達もいる。
どんな舞台でも、飛びたつ瞬間に向け、緊張のない人はめったにいないと思う。
真剣であればあるほど、観ているこちら側も熱くなってくる。
自分自身を表現することは、自己満足や自己顕示や自己実現を越えて、自分を人と分かち合うという、大きな喜びに通じる。
そして、それに触れた人の世界は、より豊かなものになる。