厚手のジャケットやコートが必要だ。
この寒い中、海の話題は申し訳ない。
温かいココアを飲みながら、書いていこうか。
私は、その当時、勤めていた会社の先輩の女性と一緒に、ダイビングチームに入った。
先輩は、お茶、乗馬、宅建など様々な資格を持っている。
ダイビングを始めるという話をすると、すぐさま、「待ちなさい。わたしも一緒にやりたい。」と乗ってきた。
この先輩は、好奇心旺盛なのだ。
いつもイキイキとしている。
そして、海の中。
先輩は、私のバディになった。
ダイビングでは、バディシステムといって、二人ひと組みになり助けあうようになっている。
海の中で、体調の変化やアクシデントがないか、お互いにチェックをする。
もしも時は、酸素を分け合う、命綱のようなもの。
また、海の中は特別な道具がないと言葉は使えない。
身振り手振りだ。
オッケー。潜降します。浮上します。
指でサインをつくる。
珍しい生き物をみつけると、みんな、身体で表現して、楽しみを分かち合う。
水中なのに、笑い声や観声が聞こえていたように、錯覚する。
浮上の時に、一気に水面にあがれば、肺が破裂してしまう。
ゆっくり時間をかけ、バディと目を合わせ、時間を測って水面を目指した。
言葉がない世界。
見つめあって、何とか伝えたい、伝えようとする。
とても新鮮だった。
子供の頃は、身振り、手振りで、身体中で、うれしい、かなしいを表現していたはずなのに…。
私の心のなかには、眠ったふりをした子供がいる。
傷つけられるの、傷つけるのもいや。
勝ち負けとかは、もうたくさん。
だから、海の中は、私の居場所。
その子には、影の部分ばかりを押し付けてきた。
これからは、もっと、広い、光が差し込む世界にでてみようか。
もしかしたら、自分の影も、世界も違って見えてくるかもしれない。
机にかじりつく他にも、勉強はある。
そして、私のバディの先輩はというと、男性さえも、物申すことをためらう、筋金入りのキャリアウーマン。
しかし、意外なものだ。
ダイビングでは、足ヒレを付け忘れて潜ったり、他のチームにまぎれこんで、いなくなったりと、茶目っ気たっぷり。
ダイビングチームの大の人気者だった。
仕事では、男性社員を厳しく指導する先輩の、男前な横顔を思い出して、私は、ニンマリする。
人は、いろんな顔をもつのだ。
光と影の両面がある。
けれども、それを裏返してみると、 光と影は、また入れ替わる。
何度も裏返していくと、光なのか、影なのかどうでもよくなってしまう。
居心地いい、この海の世界にいたいけれど、次の旅が待っているから、心を決めて、出発しようと思う。
眠ったふりをする私の中のバディに聞いてみる。
オッケー?
バディは、目をこすり、オッケーサインを出している。