聖地アキバ存続の危機?

聖地アキバいまさら説明するまでもありませんが、東京の秋葉原といえば、オタク、オタクといえば秋葉原と言われるほど、現在の秋葉原とオタクとは切っても切れない関係にあると言われています。

 そんな秋葉原ですが、昔からオタクの街であったわけではありません。秋葉原のオタクの街としての歴史は意外に浅いのです。


 例えば、1994年前後の秋葉原は、家電の街からPCの街へと変貌を遂げた直後で、オタクの街というよりはPCの街でした。

 しかし、秋葉原にあるPCショップのソフトの棚の大部分が、いわゆる美少女物と呼ばれるジャンルで占められるようになった頃から様子が変わりはじめました。

 この変化は当時のPCが、今のように一般向けの物では無く、オタク向けの物という傾向があったために、店側がオタクに売れ線の商品を増やした結果、自然に起きた現象だと思われます。

 ともかく、これらの現象により、秋葉原のオタクに対する求心力は加速し始める事になりました。そして、この傾向は、やがて秋葉原に美少女ソフト、美少女漫画、同人誌(主に男性向け創作)専門店などを誕生させるに至りました。

 おそらく、この時点あたりが秋葉原がオタクの街として決定づけられた時期だったのかも知れません。今、オタクの街として隆盛を極めている秋葉原ですが、現在、今までに無い大きな変化が街に起きているようなのです。まず目につきますのが、街のそこかしこでチラシを配るメイドの格好をした女性達です。

 それだけでしたら、以前の秋葉原でも珍しく無い存在です。しかし、そんな彼女達の対応が、以前とは決定的に異なっているのです。例えば、以前でしたら街角でお店の宣伝をしているメイドさん達に、写真撮影をお願いしたら、ほとんどの方が撮影に応じてくれたものでした。

 けれども、彼女達の多くがメイド系のショップに勤めるプロのメイドさんとなってしまった今では、彼女達の勤めるお店の教育方針として街頭での写真撮影は、大抵、NGという状態になっています。

 どうしても撮影しようと思ったら、そういうサービスのあるお店に入るか、メディアを通した事前申請しかありません。 また事前申請での審査も厳しく、弱小メディアくらいだと大抵は断られるようです。

 これは個人情報の保護、メイドさんの安全、お店の経営方針、そして、今までのオタクによる盗撮系やストーカー系の犯罪発生率の高さなどを考えましたら、致し方の無い行為だと思われます。

 オタク系のイベントでのレイヤーさん達の、2つ返事で気楽に写真撮影をさせてくれるイメージがある私としては彼女達が、オタク相手の商売をしていながらも、オタクを拒絶しているように見えてしまうのです。

 秋葉原のメイドさん達は良い娘さん達ばかりですし、彼女達の対応は当然の事なので、批判はしたく無いのですが、あまりにもビジネスライクに見えます。

 ちなみに、この種の対応の厳密化は、何もメイドさんに限った事では無く、その他の店舗にも広がりつつあるようです。

 例えば、今までの秋葉原の店舗というと、買い物をしている他のお客さんとお店の迷惑にさえならなければ、撮影を気軽にOKしてくれる場所がほとんどでした。それが今では、駅前のメイドさん達の撮影NG化と歩調を合わせるかのように、店舗の方も同様な基準での取材及び撮影不可が増えているようなのです。

 そんな中でも、相変わらず旧来の秋葉原的な雰囲気を持つ店舗も、未だに数多く存在します。例えば「東京アニメセンター」という施設は、秋葉原再開発に伴って出来たUDX内にある新しい部類の施設なのですが、名刺を渡した後に、簡単に取材趣旨を説明しただけで、撮影禁止エリアの説明こそありましたが、気軽に取材と撮影を許可していただけました。

 また、ファミコンやスーパーファミコンなどの懐かしいTVゲームを、メインの品揃えにした「レトロゲームキャンプ7号店」というお店でも、同様に2つ返事で、撮影を許可していただけました。

 他に変わったところでは、豊富な漫画やネットゲームなどが楽しめる「ゲラゲラ」という漫画喫茶や、牛丼で有名な吉野家などでも気軽にOKをいただけました。

 また、メイドさんとリフレというメイドリフレクソロジーのお店では、そういったサービスが、あらかじめ用意されているとの事でしたので、私も試しに料金を支払い、メイドさんとの会話を、撮影しながら堪能して参りました。

 だがしかし、旧来の雰囲気を持っている店舗の努力も空しく、秋葉原の変化は加速しているようでして、秋葉原のオタクに対する求心力は落ちる一方のようです。

 例えば、秋葉原の通りを歩く人達の中には、オタクでは無い一般人や、オタクから最も遠い距離にあると思われます不良系と思われる若者の姿が多く見られます。

 また、以前の秋葉原では、存在すら幻と言われたカップルの姿まで多く見られました。

 人波だけを見ていますと、秋葉原にいるというよりは、まるで新宿にいるかのような感じがします。新しく移転・改装などが終った店舗群の多くは、秋葉原というよりは新宿を思い起こさせるような店構えを持つ店舗が多いようです。

 おまけに店舗の移転や改装、近年の不況による倒産などにより、店舗の跡地が空きとなったままの状態の場所があちこちに目立ち、秋葉原の光景とは思えないような寂寞とした雰囲気を漂わせています。

 街全体が大規模な再開発中のような状態なので、仕方が無いのかも知れませんが、歯抜けの場所が目立つ状態は、メイドさんや店舗の態度の厳密化や非オタク系の人の増加とあわさって、オタクにとって秋葉原が居心地の悪い場所になるのに更に拍車をかけているような気がします。

 現在、多くのオタクが前述したような理由から、秋葉原を訪問する意味を見出せないで、中野などの旧来のオタクスポットへの回帰をしていると言われています。オタクが、秋葉原を訪れ無くなるかもしれません!

 それは同時に、オタクの街である秋葉原の独自性を目当てに訪れている一般の観光客の方々の、秋葉原に来る理由の消失をも意味しています。近い将来、秋葉原を訪れるオタクの数は徐々に減り、彼らを顧客としているオタク系の店舗の数も減らざるを得なくなるでしょう。

 そして、やがて秋葉原は、普通の街と何ら変わった点を持たない凡百の街になってしまう気がします。

 秋葉原の終わりは、もしかしたらこんな風に訪れるのかも知れません。

 最後に、秋葉原は何度となく大きな変化を体験しつつも、その度に、不死鳥のように立ち上がって来た街です。そのしぶとさには定評があります。

 ですから、これからの変化も、秋葉原らしさを保ったまま、きっと乗り越えてくれる、青春時代を秋葉原で無駄に消費してしまった1人として、そう願わずにはいられません。