「越後屋」を再現

9月9日9時59分配信


三越は前身の呉服店「越後屋」を再現した店舗を出店

セカンドライフ 「集客力」に着目…日本企業も続々参入


 セカンドライフ--。定年退職後の「第二の人生」の意味で使われてきたが、最近話題のセカンドライフは、インターネット上だけに存在する架空の都市を指す。画面上に立体的に映し出される仮想空間の中に自分の“化身”を置き、買い物をさせたり、大学の講座に出たり……。

城のような豪邸を買うなど現実世界では味わえない体験もゲーム感覚で楽しめることから“住民数”(口座登録数)は世界で900万人を突破し、その「集客力」に着目した企業が相次ぎ仮想店舗をオープンしている。セカンドライフをのぞいてみた。


 セカンドライフは、米サンフランシスコのベンチャー企業「リンデンラボ」社がネット上で自由に都市設計をシミュレーションするサービスとして03年に始めた。平面表示のホームページと違い、三次元画像なので、建物や車、衣服などを立体的に見せられる。利用者は、「アバター」と呼ばれる自分の化身を作ってその空間内に“住まわせ”、さまざまな疑似体験をする。


 誰でも無料でアバターを作り、セカンドライフの住民になることができる。一方で、店舗などをセカンドライフ上に設置するには、運営会社のリンデンラボに土地代を支払わなければならない。
 日産自動車が昨年10月にオープンした「日産アイランド」を訪ねてみた。

巨大な自動販売機で手に入るのは、自動車だ。キーワードを自販機に入力すると、まるで缶ジュースのように、小型車「セントラ」そっくりの車が出てきた。

その場でエンジンをかけ、隣のテストコースで試乗だ。
 通信販売のように、本物の車を販売するわけではないが、企業は消費者に遊び感覚で自社製品やサービスに接してもらえるので宣伝効果を期待している。日産の自販機で車を入手した人は、今年7月末までに延べ約3万4000人に達した。


 7月に国内の百貨店で初めて参入した三越。江戸時代の同社の前身、呉服屋「越後屋」を再現した。仮想店舗に来た客を、自社の通販サイトに誘導するのが狙いだ。

「三次元なので、商品をぐるりと見渡せたり、大きさを比較したりしてもらえる」と話している。
 ◇米国では仮想通貨使った取引活発

 セカンドライフ上に仮想店舗を出している国内企業は約100社。そのほとんどが日本語で利用できる。一方、本場の米欧では、コンピューターメーカーのIBMや玩具大手レゴ、運動用品のナイキやアディダスなど数百社が参加。特に米国では、仮想通貨「リンデンドル」を使った取引が活発だ。

仮想通貨とはいえ、本物の米ドルと交換可能だ(交換レートは1米ドル=約270リンデンドル)。


 売られているのは、アバターが身につける服や靴、不動産など。特に最近、活発化している不動産取引では、実世界同様、魅力のある街を開発して、有料で他人に貸し出したり、販売したりする「仮想不動産業」が盛んだ。


人気の地区は取引価格の値上がりが見込まれるため、投機的な取引で大金を稼ぎ、本物のドルに替えて数千ドル(数十万円)以上のもうけを上げた人もいる。


 リンデンドルの流通量は08年末までに1兆円を超えるとも言われるが、問題も起きている。先月8日には、セカンドライフ上、初となる金融破綻(はたん)が発生。

リンデンラボによると、7月25日に同社がギャンブル禁止方針を発表したところ、「ギンコー・ファイナンシャル」に預金者が殺到し、資金繰りがつかなくなったギンコーは、本物の通貨との交換を停止し、預金全額をセカンドライフ上の証券市場でしか取引できない同社の債券に強制転換した。


総額75万米ドル相当とも報じられており、「現実世界同様、金融当局の監督が必要」との指摘も出ている。
 こうしたトラブルが予想されることなどから、セカンドライフに出店している日本企業のほとんどが、リンデンドルは使用せず、無料で疑似体験できる仕組みを採っている。


 セカンドライフの人口や経済規模はどこまで拡大するのだろう。みずほコーポレート銀行産業調査部の野田聡明さんは「このペースで伸びれば、加入者は08年末に2億4000万人を突破する」と予測する。ただ、常時利用者は「加入者の数%程度」との指摘が多く、効果も今のところ未知数だ。

「インターネットの初期と同じように、課題と可能性が混在している段階」(野田さん)で、ロサンゼルス・タイムズ紙によると、「予想ほどの広報効果はない」として撤退する企業も出始めているそうだ。


 利用には高機能パソコンが必要で、「本格的な操作方法を学ぶのが難しい」といった指摘も。利用登録に身元確認がいらないため、利用者による暴力表現の問題も浮上している。

人気アニメのキャラクターが無断で三次元デザイン化されて使用される例があり、将来は著作権侵害として厳しく規制される可能性もある。




 ◆セカンドライフへの主な進出企業◆
 企業名       仮想世界での活動内容

トヨタ自動車 米国で販売する若者向け乗用車「サイオン」の試乗など
フジテレビ  番組と連携し、アイドルとの交流イベントを開催

三越     前身の越後屋を再現。扇子など越後屋グッズを配布

パルコシティ 実店舗にある衣類のイメージ展示やネット通販コーナーとの連携
HIS    仮想空間の名所を紹介する「バーチャルトラベルステーション」
富士通    自社の製品やサービスを紹介

SBモバイル 韓国サムスン電子と共同で、最新モデルの携帯電話を提供
野村証券   商品紹介が中心。初心者向けの金融セミナーなども

電通     文化、商業施設が集まる「バーチャル東京」を開設
慶応大学   仮想キャンパスを開設し講義を公開する予定


最終更新:9月9日9時59分