カツマ インドの呪術

密教系の呪法の原形は、古代インドの呪術にあります。リグ・ヴェーダにはさまざまなご利益を担当する三十三神があり、それぞれのマントラを唱えることで対応する効能が得られるという仕組みになっています。アタルヴァ・ヴェーダは吉祥増益の呪文「アタルヴァン」と、呪詛調伏の呪文「アンギラス」からなる呪文集のようなものだそうです。

初期の密教呪法

4世紀終わりごろの中国でさまざまな雑密経典が漢訳されました。呪歯経・呪目経・呪小児経・請雨呪経・止雨呪経・薬呪経・呪毒経といったもので、なんだか効能そのまんまの題名が付いていたりします。効能ごとに決まった呪文を唱えるという単純なものだったようです。

雑密の伝来

日本でも奈良時代には山林修行者たちの間で知られていました。修験道の開祖として知られる役小角もそうした修行者で、飛鳥・元興寺に来た朝鮮の僧から孔雀明王経法を伝授されたことになっています。また、雑密の呪法や湯薬を使って病気を直す看病禅師と呼ばれた僧侶があらわれ、貴族社会や民間でも活躍しました。孝謙女帝の寵愛で権力をふるった道鏡も山林修行者出身の看病禅師だったそうです。

諸尊法・修法の導入

諸尊法というのは、単に効能ごとの呪文を唱えるのではなくて、それぞれの効能を発揮するご利益を持つ本尊を決めて、それに対して祈るやりかたのことです。そうしたやりかたは、中国では5世紀後半から整い、さらに進んで印契や護摩といった形式ばった作法や装置も整ってきました。唐の時代に陀羅尼呪経が漢訳されて、雑密の仕組みの整備が進んだといわれます。このころの雑密は唐朝のもと鎮護国家の呪法として相当流行していたようです。