
齢62歳とは思えない【甘く危険な匂い】を発散している秋吉久美子姫
秋吉久美子と桃井かおりは【シラケ世代】と言われた70年代を象徴する女優である
桃井かおりが70年代に置き去りにされた感があるのに対し秋吉久美子は自己のスタンスは変えずにその後も逞しく前進を続けてきた気がする

秋吉久美子が珍しく【一途で健気な女性】を演じたのが、三浦友和主演の77年の『姿三四郎』だ

監督は岡本喜八、撮影が木村大作である
『姿三四郎』と言えば巨匠・黒澤明の監督デビュー作品が有名であるが、二時間だったという完全版は見ることができない❗字幕で説明されている箇所もあり残念至極だが、それでも新人監督とは思えない【品格と格調】に満ちている
『姿三四郎』は何度も映画化・ドラマ化されているが三四郎役に必要なことは【爽やかさと正義感】であり、三浦友和は適役と言える
この作品は明治時代の物語でありながら、全体的に現代的な雰囲気に包まれていることが特徴であり岡本喜八は原作とは違うオリジナルな脚本も含めて俳優の個性を引き出すことに腐心したのではないか
いたるところに岡本喜八らしさを見ることができる
作品と言える
テンポの良さ、ローアングルの効果的な使用、場面切り替えのシャープさ
三四郎が道場の名札を外すとそのすぐ後に草笛光子が玄関の表札を直すカットなどは『流石』と唸ってしまう
姿三四郎のモデル・西郷四郎は会津藩家老西郷頼母の養子である→この作品も三四郎が会津で大立ち回りを演じるところから始まる
三四郎は先輩【田中邦衛】と共に東京へと旅立つ
その後の門馬三郎【中谷一郎】による矢野正五郎【仲代達矢】闇討ち、村井半助【若山富三郎】との対決、檜垣源之助【中村敦夫】との右京ヶ原【すすぎヶ原】の決闘は従来作品と同じだが、村井半助の娘【秋吉久美子】に腹違いの姉【神崎愛】がいることがオリジナルである
上記ベテラン俳優に加え、和尚の森繁や丹波哲郎などの実力俳優が下支えをし、若い青春スターがその魅力を発揮している

檜垣源之助に勝利した三四郎は旅に出る←黒澤明版ではここで終わる
しかし岡本喜八版はここから黒澤明版『続姿三四郎』へと突入する
檜垣源之助の弟、鉄心と源三郎による復讐である
源三郎【宮内洋】の人物設定は【病的な狂人】としてかなりデフォルメされている
黒澤明版の源三郎には明らかに【能】へのオマージュが感じられたが、岡本喜八は徹底した娯楽として源三郎を狂人としている

三四郎は鉄心を山嵐で倒し、小屋で手当てを施す
源三郎は熟睡している三四郎に斧をを降り下ろそうとするが、邪心のない寝顔を見て思い止まる
三四郎と関わった全ての人間が、破れた者も含めて彼を好きになってしまうのだが、三浦友和の爽やかさはそれを納得させる魅力がある
神崎愛がフルートを吹いたり、三浦友和による青春歌謡曲が挿入されるなど【はてな⁉】的な演出もあるが、秋吉久美子の【健気な役】を見ることができる数少ない作品である