~Tへの手紙~



その後、いかがお過ごしでしょうか?

私は現在R――という山麓深くの村に滞在して居ります。

以前からA大陸を旅することを夢見ていた私は、今回ようやくA――の地を踏むことができたという訳です。

きっとこの大地ほど、自然という自然を、地球の恩恵を、極め与えてくれる処はないだろう……と夢見ていた日々、その日本での生活に身が入らずに、また日本を飛び出してしまいました。

私の大好きな詩なぞを書きながら旅して歩く、そんなことが出来たのならどんなにいいだろう――地球の遠近で詩が書けるなんて……そんな気持ちも少しはありました。

けれども本当は、唯(ただ)、私自身と生命というものをもう一度考え直したい、もっと純粋な生を生き直したいという気持ちが強かったのです。……


そんな詩友への手紙を書きかけのまま、私は宿屋を抜け出して散歩に出た。

外はまだ日暮れには間もあるというのに、空は薄暗く、一面薄墨色の雲におおわれていた。

雨もポツポツと来ていた。

私は足を早めて唐黍畑の脇道を突っ切りだしていた。

明日にでもこの村を降りて旅を続けようという思いが、私の胸を何度も過った。

しかし、今の私にとって、この村は何んとも去り難かった。

それだけ安息(やす)らいでこの村で暮らしていた。



※あの時の旅シリーズ~アフリカ・マラウェイ、リビングストン村にて~
〈続く〉