【真面目純情派女刑事】




文字の誤り、それは、凶悪犯罪とまでいかないけれど、ストーカーよりも性質が悪い。


文字の世界では、一文字間違えることは、路上駐車やスピード違反と同じくらいの罪だと言っていい。


改行の際、一文字空けずに書き進んだり、連続する類語の間違えなどは、ドロボウや押し込み強盗に匹敵する、放ってはおけぬ、過ちだろう。


陽子は妄想に憑かれたようにそう考えてしまう。


いけないと分かっていながら、まるで職業病のように、いても立ってもいられなくなり、真面目純情派女刑事に早変わりするのだ。


次々と文字の世界の路上駐車やスピード違反を取締り、ドロボウや強盗の類いにはお縄をかけてゆく。


見る間に信也の文面上のあらゆるミスが、真っ赤に染められ、公正される。


陽子は、いつしか赤を入れないでは、信也の手紙を読むことさえできなくなっていた。



〈続く〉