【Lesson 18】




ふいに、僕は右手の親指に鋭い痛みを感じた。


とっさに手を持ち上げ、目の前にかざして見た。


親指の腹の真ん中に赤い点ができている。


トンネルの壁の繁みに近づき過ぎて、薔薇のトゲを刺したのだ。


僕は自分を刺したであろう薔薇のトゲを、茂みを覗き込みながら探し始めた。


探しているうちに極端に目立ったトゲの一本を見つけた。


まるで太陽石のように輝きながら、尖(とが)った先をこちらに向けている。


直感的にこれだ! と僕は思った。


これが僕のことを刺したという保証はどこにもないのだが、これを見た時、胸の中にスゥーと冷たい風が通り抜けていくような感じがあった。


トゲが出している殺気のようなものを皮膚感覚で察知したのかもしれない。


指の痺れが回り始めた。


親指から手の甲へ、腕から肘へ、肩から背中へと、徐々に全身を痺れが駆けめぐっていく。……


……僕はもの凄い勢いで、どこかに吸い寄せられていくのを感じた。


目の前に閃光(せんこう)がはしり、視野が急に明るくなった。


と、沢山の悲鳴と叫び声を耳にした。


大きな揺れを感じた。


身体の自由がきかない。


「そうだ。そうだったんだ……」


僕は少しの間、自分が気を失っていたことに気がついた。


少しずつ、いま起こっている現状が飲み込めてきて、絶望的な気持ちになった。


どんどん急降下していく飛行機の中で、僕は必死にいま考えなければならぬことを考えようとした。


〈完結〉