【5章-4 氷河の洞穴】




いつの間にか、優吾の身体は元の人間の姿に戻っている。

氷の上に乗って、自分を抱きしめるような恰好で優吾は寒さをこらえようとする。

ふと、顔を上げると、群青色をした空の上には、ねじ曲げた針のような三日月が上がっている。

優吾は、目を大きく見開きながら、身体をぐるりと一回りさせて、この寒気から逃れる避難所を探す。

3周回ったところで、立ち止まる。

10メートルほど先の氷河にかなり大きな穴が開いているのが見える。

優吾はそこへ向かった。

わずか10メートルの間に、気力が底をつきそうになる。

入口にたどり着くと、穴の中を覗いてみる。

穴は、鯨が口を開けたぐらいの大きさだった。

そこから少しずつ円の中心を狭めながら、地下へと続いているようだった。

優吾は、ためらわず穴に入っていく。

薄暗かった入口から、段々と中へ入っていくと、不思議なことに明るくなってくる。

氷でできたトンネルの壁や天井が、白みを帯びて内部を明るく照らしている。

人が並んで二人入ることのできる大きさの穴は、斜めにずっと先まで続き、下っていくごとに、ますます内部が明るくなっていくようだった。

両手がかじかんでいる。

優吾は、さかんに両手をこすりながら前かがみになり、歩いていく。

頭がぶつかりそうなくらい天井は低い。

何のために僕はこんな所を歩いているのだろう。

優吾の頭にふと、そんな考えが過(よぎ)る。



〈続く〉
~5章-5
生きる意味~