【3章-5 カラスの話】




優吾もなんとなくであれば、動物たちの動きや表情から、喜怒哀楽は察することができると思っている。

しかし、優吾は、もっとハッキリと人間同士で接しているのと変わりなく、理解できるものたちを持っていた。

それはカラスたちである。

優吾は、カラスが鳴いているときに、あのカラスたちの言葉が分かるのだ。

もっと正確にいうならば、カラスの鳴き声が人間の言葉で聞こえるのだ。

はじめは幻聴だと思った。

精神的な病気かなんかで、カラスの声が人間の言葉に聞こえてしまうのだと考えた。

それなら、休息を思いっきり取ってリフレッシュすれば、きっと治るだろうと簡単に考えていた。

でも、ダメだった。

一ヶ月後も、一年後も、カラスを目にした時は、きまってカラスは人間の言葉で話をする。

慣れは本当に恐ろしいと思う。

慣れてしまうと、そのことに関しては何も思わなくなってしまうのだから。

むしろ、それが、自分の特別な才能なのではないかとすら思えてくる。

もともとカラスの話が理解できるようになったそもそものきっかけは、なんだったのだろう。

優吾はそれを時々、考える。

今夜も、動物病院のベッドの上で目をつぶると、自然に頭の中に浮かんでくるのは、そのことだった。

やはり……あの旅が原因だったのだろうか?



〈続く〉~4章 幸福という名の村 へ~