【海の景色が静止した時】



★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。

★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。

★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。「妹」が出会った「浦島太郎」は、実は玉手箱を開けて風船ウミウシに変身した元人間だった。

★「ターコイズブルーウミウシ」→おしゃれ金平糖ウミウシの恋のお相手。背中の突起したイボイボの先端を発光させる発光性のウミウシ。

★「イシガキ竜宮ウミウシ」→ウミウシながらにウミウシが大好物。皆から恐れられている。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。


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全身が深海色そっくりの青みがかった緑。

背中にオレンジ、腹には黄色の筋をシッポまで伸ばし、頭部には二本の漆黒色した二つの触角。

ギラギラした背を覆(おお)う鶏冠(とさか)のような大きなエラが動くたびに、水に重い微動が広がり、

それが「妹」の鼻先に触れた時には、もうオシマイだと思う。

イシガキ竜宮ウミウシが目の前にいた。

そして今、ターコイズブルーウミウシを丸飲みしようと彼をサンゴの上に押さえつけ、覆(おお)いかぶさっている。


――イシガキ竜宮ウミウシの口が大きく開く。

――ターコイズブルーウミウシの背が、あふれんばかりの輝きを放つ。

それを同時に目にした瞬間、「妹」には、海の景色が静止したように感じた。

そう思うと、不思議に自分も動けなくなってしまった。

しかし、その時、「妹」の横をもの凄い勢いで通り過ぎていく何者かがあった。

全ての海の景色が静止した「妹」の感覚の中で、その何者かの動きだけがクローズアップされていく。

それは丸く、半透明な砂の色をして、ぐにゃぐにゃゆがみながら、転がっていく。

あっ、と「妹」が思ったその時、それはイシガキ竜宮ウミウシに思いきりぶつかっていた。

イシガキ竜宮ウミウシの体が、見る間にサンゴの枝の間へひっくり返って、動かなくなった。

どうやら気絶してしまったらしい。



〈続く〉