【クジラの口の中】


★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。

★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。

★「風船ウミウシ」→体を丸めて転がって移動する珍しい種族。みんなからスーパーウミウシとあがめられている。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。


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ある月夜の晩に、サンゴに留まっていた彼を見つけてね。なにせ輝きが素晴らしかったんだ。あらゆる海の色を表現して一つにまとめたら、多分こんな色になるんだろうね。それからのつき合いさ。ワタクシメが暗い海の場所を通る用事がある時には、彼が同行を申し出てくれるんだ。何しろ暗い海の中を泳ぐんだ。彼の輝きはとても助かるよ」

クジラは、「妹」に自慢げに話した。

「そう、あなたがターコイズブルーウミウシさんなの。わたし、あなたを探していました……」

そう言うと、「妹」はターコイズブルーウミウシを見つめた。

「何か事情があるようだね。でもこの暗い場所では大切な話も、たちまち影に覆われ見えなくなってしまうよ。とりあえず話は後にして、ここから脱出しようじゃないか」

クジラはそう「妹」をうながすと、自分の口の中へ入るようにしきりに勧める。

「だいじょうぶ。食べはしませんよ。ここが一番安全だし落ちつきますからね」

大きな口が開く。

そしてゆっくり甲羅ごと「妹」たちを口に入れると、

口の端から一息、ワッと白い泡を吐き出して閉じた。

入ってみると、クジラの口の中はすこぶる快適だった。

静かでほの暗い海の中に住む、大きなイソギンチャクの無数の触手の内にいるような安心感があった。

それでも奥に行くと飲み込まれそうで怖かったので、口の入口付近から離れなかった。

また、ゆったりとした水の音が聞こえてきた。

クジラが泳ぎはじめたのだろう。

もの静かで、ゆるやかな水音だった。

しだいに眠くなってくる。

今まで頑なに感じながら抗い続けた不安から、

ようやく解放されて、いま「妹」は、安らぎに満たされはじめていた。



〈続く〉