【浦島太郎伝説】


★「おしゃれ」「お母さん」→マンモス白珊瑚の森に住む。おしゃれ金平糖ウミウシ。

★「いちご」→船形石珊瑚に住む「おしゃれ」の心友。いちごジャムウミウシ。

★「兄」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの長男。青くて大きめの魚。過度の心配性の特徴あり。

★「妹」→マンモス白珊瑚の森に住む14匹の魚たちの末っ子。オレンジ色の小さな魚。しっかり者の性分。


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よっぽど、怪兄眼と命名しようかと、「おしゃれ」は何度思ったことか。

とにかく道理を越えて推察眼らしからぬ怪兄眼を羽ばたかせてもらっては困るので、

「おしゃれ」は「兄」に、あえて、水をさした。

「何を考えているの? ほら、ごらんなさい。こんなに素晴らしい眺めは、めったにお目にかかれないんだから」

水をさされた「兄」は、突然、目を覚ましたようにキョトンとしながら、「おしゃれ」を見返した。

「いいえね、お母さん。僕の計算では、このまま行くと北の果てにでもたどり着くのではと、心配していたんです」

「そんなほうに飛んでいくなんて、すごいわね」

「おしゃれ」は、「兄」の言っていることを真に受けた。

運や場合にもよるけれど、海の生き物たちの直感の働きは、未来を捕まえることができるものなのだろうか。

やがて、「兄」の考察は、的を得ることになるのである。


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気がついたら、静かな闇に包まれた、ずっと深い海の底だった。

朽ち果てた沈没船の、鉄の四角い窓枠をくぐると、そこは華やかな御殿という感じの所だった。

「妹」は、ふと、浦島太郎伝説に出てくる竜宮城を思い出した。

昔、「お母さん」がよく話してくれたものだ。

亀に乗って竜宮城に行った人間の話を。

その人間は、竜宮城で海の生き物たちから豪勢な接待を受け、良い時を過ごし、帰り際に二つの玉手箱のどちらかを選べと言われる。

一方を選んでフタを開けて見ると、箱の中から煙が出てきた。

人間は煙に包まれる。

すると、どうだろう。
人間はとても小さなウミウシの姿に変身していた。

人間が変身したそのウミウシは、やがて、自分が身を持って経験したことを「浦島太郎伝説」と命名し、

海の生き物たちに語り継ぐ語り部ウミウシとなり、活躍することになる。

……確か「お母さん」が話してくれたのは、そんな感じだったでしょう。



〈続く〉