「おこる」と「しかる」は違う! ~第660回 | イイケン先生かく語りき

 「おこる」と「しかる」は違う! ~第660回

「怒る」「叱る」…普段から同じような意味で使い、その違いを意識したことないかもしれない。

辞書の上での意味はほとんど一緒、広辞苑でも、「おこる」の意味に「叱る」って書いてあるぐらいだ。

でも、「上手に叱って人を育てていきます」とは言うけど、「うまく怒って、人を育てます」とは言わない。

なるほど、2つの単語が存在するということは、両者の区別があるはずだ…

今回はそんなコラムである。

 

この2つの根本的違いは、感情の入り方にあると言われている。

「怒る」は、相手に対して激しい感情のままに言葉を発してしまうこと。

それに対し「叱る」は、感情的にならず冷静な言葉で注意をすること。

つまり、「自分のために怒る。相手のために叱る」ということである。

 

怒る」とは、相手が自分に悪い影響を与えたり、自分が指示した通りに動いてくれなかったりした場合に、自分が腹をたてたことを相手にぶつける動作のことである。

「俺は怒っているのだ!」ということを相手に分ってほしいとか、うっぷんを晴らしたいとか、相手を困らせたいとか、そんな理由ですることである。

そのような、「自分の目的」が果たせればそれでいい。

相手がそれでどうなろうが「知ったこっちゃない」、というわけだ。

「○○のくせに生意気だ!」、「なんで出来ないんだ!」、「さっき教えたでしょう!」というのが決まり文句である。

一方「叱る」とは、相手を正しい方向へ導くために何が良くないのかを「気付かせる」ことである。

相手が自分を含めて誰かに悪い影響を与えたり、自分が指示した通りに動いてくれなかったりした場合に、相手をより良くしようとする注意やアドバイスを、あえて声を荒げたり、語気を強めたりして相手に伝える動作のことを言う。

「あのお客様が怒っていたのは何でだと思う?」とか、「あなたはお客様では無く、従業員なの。楽しむのも大事。でも、楽しませることがもっと大事な立場よ。」、あるいは「それをふまえて、今、自分がしたことは従業員として、どうかな?」…等々、

つまり、相手に成長・改善の“気づき”や“機会”を与える行為といえる。

 

どうせやるなら、より大きな効果があった方が良い、効果的に「叱る」ために重要なこと3つである。

① 「すぐ叱る」こと、あとになって「あの件だけどね・・・」と叱るのは効果が薄い。

② 「短く叱る」こと。言いたいことは山ほどあっても、ダラダラと説教するのは意味がない。

できれば二言、三言ぐらいがベストかもしれない。

そして、叱ったらすぐその場を離れること。ニラミをきかせると逆効果。

③「11で叱る」こと。みんなの前で叱って恥をかかせる必要はない。

 

人間は感情の生き物だから、「怒るな」と言われても難しい。
感情的に怒るとかえって逆効果になる場合もある。
感情的に怒る前に「マテマテ」、それを「相手のためになるように叱るにはどうすればいいか」を考えるようにすれば、より効果的に自分の気持ちを伝えることができるようになるはずである。