いた堪れない食文化、第2弾はこれだ! | イイケン先生かく語りき

いた堪れない食文化、第2弾はこれだ!

最近、全国の「アンテナショップ」が、東京・銀座を中心に増えている。都道府県が設置する場合は、主として東京都内の山手線沿線等におかれ、地方自治体の特産品を紹介することを主たる目的としている。店舗には特産品の直売所やギャラリー、観光情報コーナーなども備えられており、地方出身者の必需品の買出し、首都圏在住者の購買等に利用される。中には北海道の北海道どさんこプラザ、宮城県の「コ・コ・みやぎ」、新潟県の「ネスパス」、香川県・愛媛県(共同設置)の「せとうち旬彩館」、鹿児島県の「かごしま遊楽館」など、特産品の販売だけでなく飲食店を併設するものもある。特に飲食を中心に、いずれのアンテナショップも好調のようである。

以前、コラム(第381回)で全国チェーンの飲食店がオールジャパンで犇(ひしめ)いていることを書いた。おかげで、食事の値段は下がり、不味(まず)いものがなくなった。
がしかし、その結果日本人の味覚の標準化が進んだ。食事の専門店がなくなり、こと和食については、食べ方やしきたり・作法、旬の概念…、つまり「食文化」が消えつつあると嘆いてみた。
サービスがマニュアル中心の画一的になった結果、労(いたわ)る思い遣りと、それを受ける歓びと感動が、「食事」というフィードルからなくなった。
こんな状況下、今後、真のグルメが醸成できるのだろうか、疑問になってくると、食いしん坊のお節介を綴ったコラムだった。

「すかいらーく」や「デニーズ」や「ロイヤルホスト」のハンバーグランチもタマにはいい。どの店で食べても同じ味だし、同じサービス(実はサービスは殆んどない状態)で値段も安いから、いつも安心できる。
200円のつまみを囲み、わいわい騒ぐ「わたみん家」や「さくら水産」。それはそれで悪くはない。
でも毎日じゃ、堪(たま)らんし、「食」を味わう要素もない。ただ食って、騒ぐ店で、「食事」を楽しむ店ではない。
廉価な値段とコンビニエンス機能を、「食事」という分野に導入させた実績は評価に値するが、食事を味わうことの本来を犠牲にした。形態的には、ファーストフードの方が、はるかに解りやすい。

「食事」と言う行動は、動物としての人間の本性、生理的欲求であると同時に、「人」としては楽しむ行動でもあった。特に日本人は昔から、ハレの日は必ず、食事で喜びを共有した。
楽しむ食事は…特産品を味わう地域の香り、旬と季節感、安さの快感と共に豪華さへの憧れ、ネタの厳選とその薀蓄(うんちく)、極上のサービスの享受…つまり「食文化」であり、したがって豊かな心の安らぎがあった。 だから素材や料理を作った人、接遇した人への感謝と感動が常にあった。

最新コンピュータシステムを導入し、興味本位しかないテレビを使い、いかに安く売るかを自慢する経営感覚は、「食文化」とはかけ離れた感性である。
それを良しとするのも、当然の帰結、結構なことと言っておく。

しかし、そうではない人達が、今、ひとつの行動に出た。
やっぱりこれはおかしいぞ! 健全なる日本人(?)は小生同様、いた堪(たま)れないのだろう。
それが恐らく、全国でブームといえる、おらが街の「B級グルメ」、
そして都道府県の「アンテナショップ」の好調ぶりかも知れない。

ゆっくり、味を楽しみ、心を豊かにしたいか、 味は二の次、安くてわいわい楽しみたいか…
さあ、あなたはどっち派??
やっぱり、TPO(時(time)、所(place)、場合(occasion))により使え分ける派が、一番賢明かも。


飯島賢二の 『恐縮ですが…一言コラム』
第382回 いた堪れない食文化、第2弾はこれだ!

2010.9.12