前回は原作の「レミゼラブル」の紹介だけで終わってしまったので、今回は映画の紹介になります。

原作は19世紀前半のフランスでしたが、映画はまもなく20世紀になることを祝う上流階級のパーティ会場から始まります。参加者の伯爵を執事(ジャン=ポール・ベルモンド)が呼び出し、車で某所に向かいます。車を止めて休憩している時に伯爵は銃撃されて死亡します。その時近くにいた猟師が執事を犯人と誤認し、執事は逮捕されます。執事の無罪の主張は認められず、牢獄に送られます。執事の妻と子供は家を出され、あてもなくノルマンディに向かいます。ノルマンディでは酒場で雇われて酔っ払いの相手をします。

執事と仲間は看守を買収して脱獄を試みますが、結局、看守に騙されて二人とも命を落とします。執事の死亡を聞いて妻は自殺します。息子のアンリ・フォルタン(この役もジャン=ポール・ベルモンド)はボクシングに打ち込み、ミドル級王者になります。引退後は運送業を始めます。

パリではバレリーナとして有名になったエリーズがいました。エリーズが踊る「レミゼラブル」の評論をしたことで、法学部の学生アンドレ・ジマンとエリーゼは仲が良くなり、結婚します。結婚後、一人娘のサロメが生まれます。このサロメは現作の薄幸の少女、コレットでしょう。


コレット(エミール・パイヤール画)

パリがドイツ軍に占領されるとユダヤ人のアンドレ・ジマンは身に危険を感じ、エリーズとサロメを連れてスイスに脱出する決心をします。その脱出行を助けてスイスの国境まで連れて行く役割を担った人物がフォルタンでした。途中、サロメをフォルタンの子供にして修道院の寄宿学校に預けます(ユダヤ名のジマンでは危険なため)。苦難を乗り越えてスイス行きの仲介者の所へ到着します。しかし、途中でユダヤ人を運んでいる人物としてフォルタンのことが密告されており、帰途、逮捕されます。フォルタンを逮捕、拷問した人物は「レミゼラブル」で執拗にジャン・バルジャンを追い回したジャベール警部を思わせます。


ジャベール警部

ジマン夫妻は他のユダヤ人等と仲介者の手引きでスイス国境まて来ますが、仲介者はユダヤ人のことをドイツ軍に密告しており、国境を超える直前まで、機関銃で打たれます。大半のユダヤ人は死亡しますが、アンドレは足に銃傷を負いますが辛くも助かります。エリーズは銃撃は逃れますが、逮捕されます。アンドレは近くの農家に匿われて治療を受け、命は助かりますました。エリーズはドイツ軍高官の接待を強制されますが拒否したため、ポーランドの強制収容所に送られます。

フォルタンは警察から解放された後、レジスタンスに加わります。親ナチ派の家から美術品を盗んだり、親ナチのヴィシー政権の列車を襲撃したりします。ノルマンディに行き、連合軍D-Dayに遭遇します。その時、酒場の息子マルタンを救います。このマルタンが後にサロメの夫になります。フォルタンはドイツ軍のトーチカを破壊して連合軍の上陸を助けます。

農家に匿われていたアンドレは農家の妻と仲良くなり、夫が嫉妬します。夫がアンドレを毒殺しようとした時、妻は夫に向けて銃を発射します。そして、二人は揉み合って死んでしまいます。アンドレは様子を見に行くと二人が死んでいるのに気づきます。早速、サロメのいる修道院に電話します。

パリが解放されるとフォルタンをサロメが尋ねてきます。フォルタンは強制収容所を生き抜いたエリーズのいるレストランに連れていき、二人は感動的な再会をします。しばらくするとアンドレも来ます。しかし、以前フォルタンを逮捕、拷問した警部が来て、列車強盗の罪で逮捕しに来ます。フォルタンは逮捕されたものの、警部がドイツのゲシュタポの協力者であったことをばらすと言うと警部は拳銃で自殺します。フォルタンは裁判にかけられますが、弁護士となったアンドレの尽力で無罪を勝ち取ります。

時間は経ち、サロメとマリウスは結婚することになります。フォルタンは市長となっており、結婚式を取り仕切ります。


原作を20世紀に移したためストーリーに少し無理がありますが、原作のシチュエーションを生かす努力は感じられました。勧善懲悪的な所もあって、最後の場面は感動的でした。