パジャマ更衣が 終わり
居室ベットに 横になった 藤山さんが
もう一度 居室の 扉を少し 開けて
顔を 出して 来た
離れた 場所で そちらに 目をやると
居室から 出て 背を向けて 歩く
職員の 彼に 向かって
ありがとう ありがとうございます
本当に ありがとうございます
と
涙を流して 手を すり合わせて
何度も 何度も 頭を下げて
拝んでいた
もう一度 彼は 居室に戻り
今日は 早く 寝ましょうね
と 優しく 声を かけていた
昼も 夜もなく
せんせーせんせーと
寂しさを 訴える 藤山さん
職員の心が 疲弊して
つい 出てしまった言葉に
噛みつく 藤山さん
職員の心は
拘束される 8時間 又は
17時間の 業務としての
忍耐の拘束
藤山さんの心は
帰れない 戻れない
切り替え られない
訴えても 届かない
逃亡すら 出来ない
先が 見えない拘束
常に 心が最悪の ひとりぼっちの
藤山さんの 気持ちは
藤山さんしか 解らない状況
職員は 対価を 受け取り
野に 放たれ なんなら その後
逃亡しようと 思ったら 可能だけど
今の 環境を 維持したまま
苦痛の壁を 乗り越える方法を
藤山さんも 職員も
見つけられていない
見つけられるんだろうか
けど あの 一瞬
ホッとして 涙して
感謝を 述べていた
藤山さんの 心の熱が
見ていた 私の心には
届いていた
ぼく 何にも してないんですけど
という 彼だったけど
天使の羽が 生えてるよ
と 思わず 声を かけてしまった
あの 後 よく 眠れただろうか・・・