加納石人の書
 
本日より、奥の細道
始めます!

火曜日、木曜日、土曜日に更新ですニコニコ

 
粛々とご紹介いたします。
俳句は五十句
 
長い旅の始まりです。

奥の細道は、
日光路・奥州路・出羽路・北陸路

江戸深川を出発し、
岐阜大垣まで!!

松尾芭蕉翁の旅と、加納石人の書
 
是非、お楽しみくださいませ。
 
※なお、現代語訳は、
『奥の細道 現代語訳・鑑賞  
山本健吉 (飯塚書店)』
より、引用させて頂きました。
 
 ☆彡

 おくのほそ道
第1回

日光路(江戸深川ー殺生石 芦野)


 


 
 
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
 
舟の上に生涯をうかべ、

馬の口とらえて老をむかふる物は、
 
日々旅にして旅を栖とす。

古人も多く旅に死せるあり。
 
予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、

漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、
 
去年の秋江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、

やゝ年も暮、
 
春立る霞の空に白川の関こえんと、
 
そゞろ神の物につきて心をくるはせ、

道祖神のまねきにあひて、取もの手につかず。
 
もゝ引の破(やぶれ)をつゞり、笠の緒付かえて、

三里に灸すゆるより、
 
松島の月先心にかゝりて、住る方は人に譲り、

杉風が別墅に移るに、
 

  草の戸も住替る代ぞひなの家
 
 
面八句を庵の柱に懸置。
 
 
 
【現代語訳】
 
月日は永遠の旅客、往き交う年もまた、旅人である。
 
舟の上に生涯を送る舟子も、馬のくつわを取って老いを迎える馬子も、
 
その日その日が旅であり、旅を栖(すみか)としている。
 
古人も旅に死んだ者が多い。
 
私もいつの年からか、ちぎれ雲のように風にまかせて歩く漂泊の思いが止まず、
 
先年は海浜地方をさすらい歩いたりした。
 
去年の秋、隅田川ほとりの破れ小屋に帰り、蜘蛛の古巣を払ってしばらく落ち着いた。
 
ようやく年も暮れ、春になって霞の立つ白河の関を越えようと、
 
わけもなく神に取り憑かれてもの狂おしく、
 
道祖神の招きを受けているようで落ち着いて何も手につかない。
 
そこで股引の破れをつくろい、笠の紐をつけかえて、
 
三里(膝頭の下の外がわ)に灸をすえたりなど、旅支度にかかっているうちに、
 
松島の月は如何かとまず気にかかって、住む庵は人に譲り、
 
杉風(さんぷう)の別荘に移ったので、
 
 
草の戸も住替はる代ぞ雛の家
(住み棄てた草庵も、新しい住人の住居となって、折しも桃の節供のころとて、
私のような隠遁者と違い、華やかに雛を飾る家になっていることだろうよ。)
 
この句を発句にした表八句を作り、庵の柱に懸けておいた。
  


~『奥の細道 現代語訳・鑑賞  
 山本健吉(飯塚書店)』より〜