最近母の勧めで、二宮敦人著書の『最後の医者は桜を見上げて君を想う』を読んでみた。
この小説は何冊かのシリーズになっていて、映画化の予定もあるそうだ。
今日はこの本について紹介したい。
もし、あなたが医者に「あなたに重大な病があります。しかし、治療すれば生き延びることができます。」と言われたら、どうするだろうか。
多くの人は、生き延びる道を選択するだろう。きっと私もそうする。仮に白血病や癌、脳腫瘍などの重病だったとしても、現代の発達した医療技術なら治る可能性がある。賭けてみる価値はあるだろう。
しかし、その先に待つのは終わりの見えない闘病生活。病の進行具合によっては、身体に負担のかかる強力な抗生物質を投与することもある。快方に向かうどころか、悪化して新たな選択を迫られるリスクもある。患者やその家族への負担は小さくない。
作品内で気になったセリフがある。
「病に挑むか、自ら死に向かうか」(意訳)
「自ら死に向かう」というのは、決して自殺するという意味ではない。もし病と闘って良い経過が得られないのであれば、運命を受け入れて前を向くという選択だ。以前話題になった「安楽死」もその一つだろう。
作品内では、患者のためを想い延命に没頭する医者と、患者のために死の選択肢を提示する医者との対立が描かれる。
しかし、それぞれの患者は分岐点を前に葛藤し、患者と家族の間でも行き違いが発生する。病に挑むか、諦めるか。その決断、結末が良かったのか悪かったのか。そこに『正解』は存在せず、信条も捉え方も人それぞれだ。
上記の例は、日常を普通に生きる私たちにとっては大袈裟で非現実的だ。「不謹慎だ」と思われる方もいるだろうし、私もそんな気味悪いことを進んで考えたくはない。
だがこの本に限らず、遠回しに死を扱う有名な作品は多い。ならば、この本を読んだ今だけでも少し考えてみたい。
もし私が、私の周りの人間がその立場になったら。どの選択を取るだろうか・・・