日常に溢れている『数字』は、わかりやすい指標であり、厄介なものだ。例えば学校のテストの成績、会社であれば業績。自分がどう捉えたとしても、周りは個人の裁量で優劣を決めてしまうことが多い。
数字との闘いは、プロの世界にとってもシビアだ。今のプロ野球では西武ライオンズの打線が絶好調で、ある日の試合では8人の打者が打率3割以上をマークしていた。
野球を知らない人でも、「『3割打てば一流』と言われるプロ野球の世界」と考えるとお分かりいただけるだろう。
しかし一方で、思うような成績を残せない選手もいる。意識していないつもりでも「チャンスで三振、打率1割台に低迷」などと言われると、どうしても気になってしまうもの。
これについて、「数字と闘えるようになったら一流だが、それまでは闘うな」と著書で述べていたのは、2004〜11年に中日ドラゴンズを指揮した落合博満氏。
2011年、絶不調に陥った2人の主力打者(A、Bとする)がいた。落合氏は「Aは単に感覚的な問題に加え、数字を気にして気負いすぎたことが要因」と推測し、「Bは新たな技術を身につけようとする上で我慢の時期だった」としている。しかし、2人ともシーズン終盤の大事な場面では活躍し、チームをリーグ優勝に導いている。
人間はどうしても、結果が伴わないときは数字を見て(誰かに指摘されたりして)しまい苦しみがち。ただ、その中で何を目的にし、突破口を切り開き飛躍するにはどうするべきか。
結果は後からついてくるが、その人自身を全否定しているわけではない。数字に振り回されるだけではなく、そこから一歩を踏み出すことで、新たな自分を見つけることに繋がるだろう。
参考文献・落合博満氏『采配』