クマオの女は全くお酒を飲まないらしい。

 

ある時クマオに尋ねた。

「彼女お酒飲まないなら、食事の時間は短いの?」

 

いつもながら女の話となるとクマオの口は重い。

「うん・・・だから食べるスピードが合わないから、じーっと待ってる」。

「ふーん」。

 

こんな些細な情報でも一言一句聞き漏らさないように食い入るように聞いてしまう。

 

顔も知らないその女のことをそれなりに想像してその情景を頭に描く。

 

ふと考え込んだ私を見て、クマオは場の空気を変えようと思ったのか、続けてこう言った。

 

「オレもだんだん酒量が減ったよ。前ほど全然飲めなくなってる」。

「うん、確かに前ほどじゃなくなったね」。

 

そう言いながら私は以前のクマオの酒量を思い出した。

 

そう、以前は飲まなきゃだめみたいに飲んでいたクマオ。家でも外でも旅先でも。

 

そうか!今それほど飲まないのは、食事の後にすることがあるからだ。

 

今は食後にはお酒よりも楽しいセックスが待っている。

 

むしろほどほどの酒量にしないとできなくなる。女を喜ばせることができない。

 

「前より飲まなくなったのは後ですることがあるからでしょ。健康的で健全だと思う」。

 

自分でそう言いながら私は悲しくなった。クマオへの嫌味を言ったつもりが反って自分を

 

傷つける。クマオは一瞬固まった表情をした。私はさらに自虐的に言った。

 

「前はしなきゃいけないことから逃げるために飲んでたようなとこあったもんね。

今は若い人と付き合ってるおかげで健全になれたね」。

 

言いながら泣きそうになる。

 

たわいもない会話の中にも落とし穴は潜んでいる。それはまるで病巣のようだとも思える。

 

女が、女の存在がある限り、この病巣はなくならない。

 

クマオは低い声で言った。

「りこ、オレのこと恨んでるのか」。