その週末は3連休だった。
クマオとは、日曜日の食事と、月曜日はショッピングと珍しく2日間とも会えた。
それからはしばらく平穏だった。当時の日記を見ても、クマオにお弁当を作ったり、
夜ご飯の準備をしたりと、ありきたりの日常の記録ばかりが残っている。
流れが変わったのは木曜日。
その日はお弁当を作り、出勤前に寄ってくるクマオに手渡す。
「りこちゃん、風邪ひいたらあかんよ。元気でいてよ。」
いつものクマオの言葉。だけどその日は何故かそればかりを繰り返す。
お昼、クマオからライン。「いただきます」とお弁当の写真。しばらくすると「ごちそうさま」と
完食した写真。いつもと同じだが、朝のクマオの様子を思い出すとピンと来た。
クマオに問いかける。
「クマオさん、もしかしたら彼女と旅行行くの?明日はお仕事お休みするの?」
すぐに既読になったがしばらく返信はない。きっと、私に見透かされて動揺している。
「うん。お出かけしてくるよ。りこちゃん、いつもしんどい思いさせてるな。日曜、待っててな」。
観念したようなクマオの返信。
やっぱり。ズキンとする心臓。また旅行。つい先月も行ってたのに。
「大丈夫。日曜会えるの楽しみにしてるよ」。
それでも私は心を強くしてそう返信する。
クマオが本当のことを言ってくれたのはこれが初めてだ。嘘をつかれるよりうんとマシだ。
私は大丈夫。声に出して言ってみる。
「りこちゃん、今日お弁当手渡してくれたりこも、昨日自転車乗ってたりこも、ごはん作って
くれてるりこも、かわいいなと思ってしまうよ。いつも笑顔にしてくれる。ありがとう」。
この言葉は、クマオのずるくて上手い二枚舌なのかもしれない。
しかし、それでも私は嬉しかった。
クマオの非情さではなく、温かい思いやりを感じることができたから。
そして私はせつなくなった。