【カイロ=大内清】エジプトで新憲法案の是非を問う国民投票が15日から始まる。モルシー大統領と、その出身母体であるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団が制憲プロセスを主導していることに反発する世俗主義勢力中心の反モルシー派は12日、自由や権利の抑圧につながる恐れがあるとして同案の否決を目指す考えを強調。否決されればモルシー氏の求心力低下は必至だけに、政権への信任投票の意味合いも持つ。
モルシー氏に批判的な司法界の一部が投開票の監視活動を拒否していることから、各投票所の監視要員確保のため、投票は15、22日の2回に分けて行われる。新憲法案全体への賛否を問う二者択一で、有効投票の過半数で承認される。
エジプトの新憲法案の是非を問う国民投票で、世俗主義勢力を中心とする反モルシー派の根底にあるのは、モルシー大統領が新憲法を通じ、自らの母体であるムスリム同胞団による支配を確立しようとしているのではないか、との疑念だ。
新憲法案はまず、大統領が国政の重要問題に関し、いつでも国民投票を実施する権限を持ち、その結果は司法を含む「あらゆる国家機関を拘束する」としている。
民意がすべてに優先されるとの“理念”を強調したようにみえるが、反モルシー派や民主化勢力は「国民投票が乱用され、ポピュリズムに陥る危険性が高い」と批判。特に、組織力が強固な同胞団を通じてモルシー氏が大衆を動員し、司法や議会の監視機能を骨抜きにするとの懸念がある。
自由や権利が制限されかねないとの批判も根強い。新憲法案では報道の自由について、裁判所の決定があれば、出版物の発行禁止や報道機関の閉鎖も可能だと規定、必要に応じて検閲も実施することができるとしており、独立系メディアは「恣意(しい)的な運用の余地がある」と反発を強めている。
早くから関心が集まっていたイスラム法(シャリーア)の扱いについては、「シャリーアの諸原則を主要な法源とする」と、ムバラク前政権での旧憲法の表現を踏襲。国民の約9割がイスラム教徒で、同条文への表立った異論は少ないが、モルシー政権下で急速なイスラム化が進むという警戒感も指摘されている。
一方で新憲法案は、モルシー氏が自らに絶大な権限を付与した憲法宣言を発布する中、急ピッチで承認された経緯があるだけに、反モルシー派は「そもそも正当性がない」との立場だ。
国連人権高等弁務官事務所のピレー高等弁務官は、政権側の強引な手法に疑問を呈した上で、女性や宗教マイノリティーの権利擁護などが明文化されていないなど「権利規定は旧憲法より弱まっている」と批判した。(カイロ 大内清)
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