小説「BOSS」を読んだ。
これは、メジャーリーグ「NYメッツ」のGMに就任した日本人の1年間の物語。
「GM」とはゼネラル・マネージャーのことで、スポーツの分野でいえば
チーム運営の全権を持つ存在のことである。
チームの強化のために誰を獲得するか、誰を解雇するかの決定権をもち、さらに監督、コーチ、スカウト、スコアラーなど裏方の人事権も有している。
この小説では、「スモールベースボール」を志向する日本人GM高岡のチームへのかかわり方から組織をまとめることの困難を描く。
高岡は数字こそ選手を見極める最高の指標であり、それ以外には全く興味を持たない。数字以外で選手を評価するのはナンセンスであると考えている。選手の意志を尊重せず、GMの意向に従い不平不満を言わない選手がプロであるという考え。だからこそチームに必要だと判断すれば守備位置のコンバートに躊躇しないし、コンバートしたポジションで自分の仕事をこなそうとしない選手は移籍させてしまう。
そんな高岡とは対照的に、メジャーの世界で50年の歳月を送った老獪なGMウィーバーは時に過激に高岡を批判し、チーム監督への不満を球場の観客席で叫ぶ人間味あふれるGMとして描かれる。
ウィーバーは、計算もする。自分がこう言えばメディアはこう書く。そうすれば選手にはどう影響があるか、などを考えながら記者と話をする。オフレコだよ、と言いながら書かれることを期待し、それを活用する。
しかし、一人の野球の好きな人間として、どういうドラマを演出するか、選手の見せ方まで計算し、その結果、計算した以上の結果を導き出す。選手が意気に感じることで、プレーは変わる。
スポーツには流れがあり、流れを生むのは熱を持った一つのプレー。
それが理解できるGMか、で長いシーズンの結果が変わる。その重要性が高岡に理解できるか?
小説は、非常に面白くGMの仕事の難しさ、面白さを描いてくれていた。
その小説を読んでしばらくし、日本のプロ野球で中日のGMに落合氏就任?というニュースがでた。
現在、日本でもGMを採用する球団がある。
巨人も阪神も採用している。横浜もソフトバンクも。そこに中日も加わるという。
私は落合さんの野球観というか選手を見る観察眼、シーズンを戦うために必要と思ったことをやり抜く強さ、などかなり有能な人だと思っている。
しかし、GMというのはかなり広い分野を担当する。そこには球場に来る観客の増員をどうするか、という問題も含まれる。
球団経営にプラスになるアイデア、ファンサービスにも積極的になる必要がある。
監督の場合、観客動員は球団職員の仕事でしょ、と言えた。だから落合氏は監督としてインタビューは受けない、とも言えたしファン感謝祭も欠席できた。
しかし今度は、いかに球団経営を良くするか、まで考えなければならない。ここではメディアとの軋轢は減らしたい。揉めると結果的に叩かれるのはチームであり、結果収益にマイナスの影響を与える。
使うお金を少なくして、選手を集める。そして勝てるチームを作る。
監督の采配がダメで負ける。それがGMの責任となる。
そういう監督を連れてきて、チームを任せたのはGMでしょ、だから責任はあなたにある、となる。
落合氏は監督として有能だった。
しかし、中日というチームはいま、高齢化が進み、新戦力がなかなか出てこない。立て直すのに少し時間がかかりそうであるが、新しい監督と新しいGMでどこまで結果が出るか、その結果が出るまでファンやOBが我慢してくれるか、そこが問題かもしれない。
GMという野球が好きな人であれば、一度はやってみたいと夢を見る職種。
誰を先発に起用し、4番に誰を打たせるか、どんなチームにするか、監督に呼びたい人、投手コーチは誰で、バッティングコーチは、などを頭の中で考えることは何度もある。
球場を天然芝に替えて怪我の心配を減らして、などなど。
日本ではいまだに、元選手が多いGM。
今回も落合氏が就任する。
ちょっとうらやましい。けど、かなり大変だろうと思う。