衝撃的なタイトルかもしれない。
売国奴って、いまどきそんなのいない。という人もいるかもしれない。
しかし、この本を読めば今の世界の中での売国奴の意味を正しく理解できるだろう。ただし、それは最後まで読み進めた後、「おわりに」で書かれている中野氏の言葉までたどり着いてこそわかるのだが。
この本を読むと、
官僚がなぜこんなに間違えた判断を繰り返すようになるか?
政治家と官僚の仕事の内容の違いの意味
アメリカがどういう意図をもって外交を行うか
政治が2流では経済は同じく2流になる
などなど、三橋氏と中野氏のそれぞれの専門としての知識が存分に発揮されているため、すごく情報が濃密になっている。
この本では橋下大阪市長が行う、改革路線の危うさを中野氏が展開する。
ここで参考になるのが、市場原理主義を支持する人たちの根本からの思い込みが間違えているということ。
市場原理主義の人たちがよく言う
「政治に任せておくと間違えることが多い。だから市場に任せれば、不要なものを排除し、健全なものだけが残る」ということ。
しかし、政治が間違うように市場も同じく間違う。
これはサブプライムローンの破たんから世界中に金融危機をまき散らしている金融市場を考えれば当たり前に思うが、市場原理主義のひとたちは、そこを言わない。
また、市場に自由にやらせてしまうと危険なものがあることも中野氏は指摘する。
現在の漁業では、マグロを規制しようとしている。
それが、なぜなのかを考えてみればわかるだろう。
マグロは大物を釣り上げれば高価で売れる。世界で人気があるために乱獲される。市場に任せたままだと、一気にマグロを捕獲してしまう。資本家は基本的に短期で儲けが出る商品にしか興味がないため、売れる時期を逃さない。
結果マグロが激減し、資源として成り立たなくなる。
だからこそ、世界的に捕獲量を規制するのだ。
マグロだけでなく、日本でもアユ漁は期間限定だし、アワビなども大きさで捕っていいか、海に帰すかが決まる。
これを中野氏は
市場 対 組合
市場 対 政治
という。
市場の声が高いと規制緩和などが言われる。
しかし、これはインフレを抑える政策であり、デフレ期にこれを行えばデフレが進行する。
現在、橋下大阪市長は懸命に市役所職員を削減する努力をしているが、これをすれば確実に大阪市の景気が悪化する。市役所職員の雇用がなくなれば市が払う給与が減るから市の財政はよくなる。
誰もがそう思う。しかし職員が使えるお金が無くなれば、消費がなくなる。すると市の経済に悪影響が出る。
働かない職員を切る。その代り同じ賃金で新しい職員を雇うなら血の入れ替えとなるだろう。
しかし、一気に職員の職場環境が悪化すれば、職員として働こうとする人も減る可能性はある。
やり気のある人が来るから大丈夫だ、というかもしれないが、しかし人間はそんなに強いものではない。
リーダーシップが強力であればあるほど人間は委縮しやすい。怒られることをこわがれば、確実に組織は衰退する。
今は、しっかりと組織を立て直し、働く環境を整備しなければならない。真面目に仕事に取り組む姿勢を取り戻すために指導する必要がある。ここにこそ政治力が生かされなければならない。
しかし、それをするには根気がいる。真のリーダーシップを使うには気力も胆力も必要である。
個人の責任にしてしまって、簡単な改革論で人を切っていけば、もし仮に問題が発生しても、個人の努力不足として処理できる。自己責任論で解決させて、市政者自身に責任が来ないようになっている。
だから、改革派の政権は長期政権になりやすい。
小泉政権もそうだった。
こういう本を読んで考えるとき、日本人はけっこう甘えていると思う。
政治の責任にしておけば、文句だけ言ってればいい、そう考える。
自分の頭で考えず、マスコミの印象で操作されて、安易な判断を行う。
しかし、民主主義も万能ではないし、間違ってとんでもないことをやらかす。
ナチスドイツも民主主義が生み出した。
いまの民主党も民主主義が生み出した。
民主主義を正しく機能させるためには、判断材料を間違わないようにしなければならない。
政治家を選んでいるのは、わたしたち国民なのだから、経済が悪化している責任は自分たちにある。
次に間違わないようにしなければ、また日本は後退するだろう。
孫子の代に負担を残さないように、しっかりと判断すべき時だと思う。