(長八美術館 :飛天の像1)

 

2022年6月21日

 

皆さん、こんにちわ

 今日は、天女と羽衣についての話をしようと思います

 

 「羽衣」というと、天人、あるいは天女がまとう半透明の衣で、空中を自由に

舞うことの出来る衣装と言われます。

 

 天女と羽衣について、印象に残っている話があります。大分以前、「永劫」と

いう言葉に惹かれて、その意味を調べたことがありました。

 

「永劫(えいごう)」とは、仏教用語で、これから未来に亘って続く、果てしなく

長い年月を表す言葉です。

 

 その定義として、天女が、百年に一度空から舞い降りてきて、その羽衣の袖で、

7キロ四方の大きな岩を1回サッとなでて、無くなるまでの時間を表すという

ものでした。むしろ、永遠を示す言葉として、「未来永劫」と言ったりしますね

 

 美しい表現であると共に、何か、言い回しが気に入って、また、そのイメージ

目に浮かぶようで、心に残っていました

 

 一方、逆に時間の最小単位についても、仏教用語からくる謂れがあり、それは

「刹那(せつな)」という言葉です。「刹那的」、「刹那主義」などと使います

 

 この定義は、「1回指を弾く時間」と言われ、75分の1秒となります。

現在の私たちは量子物理の最小単位なども知っていますが、かつての時代の

観念的な定義でした。

 

 

 話を、「羽衣伝説」に戻しましょう

 

 西伊豆の松崎町に「長八美術館」という、江戸時代から明治時代に生き、

名工と言われた漆喰の左官職人 入江長八の残した作品が展示されています。

 

 彼は、漆喰を材料に、多くの作品を残しましたが、その中に、天女の鏝絵

(こてえ)として2つの「飛天の像」の作品があり、漆喰とは思えない、

その艶めしさから天女のイメージが伝わってきます。なお、飛天とは、

空を舞う天人の意味です

 

 歴史を更に遡ると、天女と羽衣に纏わる話は、日本の各地に数多く残って

います。

 古くは奈良時代の「丹後国風土記」にも残されています。また、室町時代の

世阿弥の作品とも言われます。

 

 時代を経て、様々な言い伝えとして拡がり、地名になったり、歌舞伎や能の

世界でも、語り継がれており、「羽衣」という演目があります。坂東玉三郎の

美しい天女の舞が圧巻です

 

 代表的な「羽衣伝説」を見てみましょう

 

 静岡県の三保の松原が舞台となり、漁師が釣りに出かけて、海辺の松の枝に

罹った美しい衣を見つけたところから話が始まります。

 

 8人の天女が、人間の女性の姿で、水浴びをしています。その様子を覗き

見た漁師の男は、美しさに心を奪われ、なんとか天女を天に返すまいとして

その羽衣の一つを隠してしまいます

 

 羽衣を無くして天に帰れなくなった天女は、地上の残ります。そして

漁師の妻になり、仲睦ましく暮らし、子をもうけます。

 

 この展開は、別の説もあり、老夫婦の養女になる等、いくつかのストーリー

ありますが、いずれも最後は、羽衣を見つけ、天に帰っていくという話です。

 

 実は、この羽衣伝説が、後の「竹取物語」に深い関係があると言われて

います。天に帰る天女の悲しみと、かぐや姫が翁と別れる際の嘆きの場面と

共通したところがあります

 

 更には、羽衣伝説は、日本だけではなく、中国やインド・フィリピン等の

東南アジア、そして、ヨーロッパにも存在し、語り継がれています。

不思議ですね

 

 最後に、後日談として、天に帰った天女と男の再開の話があります

 

 それは、日本の中国・四国・九州地方に残る七夕伝説です

  

 もうすぐ7月、梅雨明けの時期が気になるところですが、次回は

「七夕」に纏わる言い伝えと星座についてお話します

 

 お読みいただきありがとうございました

 

 

(長八美術館 飛天の像 2 )