2022年2月28日

 

 

美術展の密かな愉しみ        

                             

 私たちの良く知っている世界の有名な絵画が、美術展として企画され、

気軽に鑑賞することが出来ます。

 

 私も、絵画の鑑賞は大好きで、コロナ禍での不自由さはありましたが、

最近はまた出かけることが可能になり、嬉しく思っています。

 

 そんな中、最近では、「フェルメールと17世紀オランダ絵画展

(於 東京都美術館)」や、「メトロポリタン美術館展(於 国立新美術

館)が開催されています。

 

 私のこのブログの内容と、世界の絵画は、不思議な結びつきが度々

見られます。

 

 まず、「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」の、ヨハネス・

フェルメール1632~1675) は、17世紀オランダを代表する画家で、

生涯37作品しか残していませんが、「光の魔術師」と称され、ゴッホと

並び、日本人に大変好まれている画家のひとりです。

 

 今回は、ドレスデン国立古典絵画館所蔵の作品が展示されています。

一番の注目は、《窓辺で手紙を読む女》という1657年~1959年頃の

作品です。

 

 室内で手紙を読む女性が」描かれており、窓から差し込む光の表現が

秀逸です。実は、この作品、女性の右上の背景は、壁と思われていました。

しかし、1979年のX線調査により、そこには、元々額に入った「キュー

ピッド」の画が描かれており、上塗りされて、壁の様子になっている

ことが分かりました。

 

 私の2021年12月2日のブログ「キューピッド(エロス)物語」で書いた

ように、弓をもったその姿は、天使ではなく、愛を司る神、キューピッド

他なりません。

この認識により、絵を眺めます。

 

 長年、フェルメール自身により、上塗りして消したと思われていました

が、2017年からの調査・研究により、実は、彼の死後、何者かにより

消されたいう結果が発表されました。

 

 その衝撃的な事実の確認を経て、大規模な修復プロジェクトが行われ、

そして、描かれた当初の姿で、キューピッドの画中画が現れました。

 

 今回のフェルメール展は、修復後、所蔵のドレスデン絵画館以外では、

世界初の展示として、日本で公開される貴重な機会です。

 

 さて、もう少し時代を遡ると、この絵に纏わる色々な話が残って

います。そもそも、ずっと作者が不明で、1742年にドレスデン国立

古典絵画館がこの絵を入手した時は、所説ある中で、レンブラントの

作品として購入されたといいます。

 

 そして、無名だったフェルメールの作品と鑑定されたのは、なんと

購入100年以上も経った1862年のことでした。それは、彼の死後、

187年の時を経ていました。

 

 更に、キューピッドの画中画は塗りつぶされていたので、当時の

絵画評論家は、「手前のベットの上に、果物皿から桃がこぼれて転が

っている姿は、性的暗示である」と評したり、「女性が光に目を向け

ず、頬を紅潮させているので、神の罪悪から目を背けている」と解釈

される等、様々でした。

 

 ところが、そこに、キューピッドの画が表れたことで、この作品の

作者の意図俄然明確になり、女性が読んでいる手紙は恋文であり、

誠実な愛のイメージが定着したのでした。

 

 更に、フェルメールは、「窓辺で手紙を読む女」から約15年後に

「ヴァージナルの前に立つ女」という作品を描きますが、女性の背後

には「窓辺で手紙を読む女」の画中画とそっくりのキューピッドが

描かれています。

 

 ただ、良く注意してみると、足元に大きな違いがあります。

「窓辺で手紙を読む女」では、キューピッドが2つの仮面を踏み

つけているのです。後者にはそれがありません。

 

 仮面は、当時、「ペルソナ」と言われ、自分を隠す、欺瞞、悪徳

等の意味を示しているとされ、それを踏みつけるということは、

「真実の愛の証」をキューピッドが強調し、純愛の象徴として、

手紙を読む女性が描かれたと解釈されます。

 

 そんなことを想いながら、「窓辺で手紙を読む女」を愉しみたい

思います。

 

 次回は、また、別のキューピッドが登場する「メトロポリタン

美術館展」ついてお話します。

 

(本件とは別のフェルメールの代表的作品「真珠の首飾りの少女)