ここで、いつも繰り広げられる野球談議。
というか、選手、監督の悪口。
年齢や職業はまちまちだが、共通しているのは、野球好きということと、もう、どう足掻いても出世しそうもないということ。
「あの継投は解せません」
「うん、早過ぎますな」
「もう少し投げさせてもよかった。球も活きてたし」
「そうそう、あの監督、球数にこだわり過ぎなんですよ。メジャーじゅあるまいし。まったく」
プロ野球から少年野球まで、話題は尽きない。
巨人ファンもいれば、阪神ファンもいる。今では希少種となったオリックスファンやヤクルトファンさえいる。
みな、さほどの野球経験があるわけではないが、原監督や栗山監督などは自分の部下同然である。
1週間前に配属された新人に、仕事の何たるかを語るような苦言を呈する。
仕事ができないから、今の地位にいるということは完全に忘れている。
そのくせ、長嶋茂雄は『ミスター』と呼び、王貞治は『王さん』と呼んで崇める。ともに子供時代のヒーローなのだ。
野球に詳しいというより、選手の属性やチームの裏事情にやたら詳しい。
要は、ひと昔前の井戸端会議のように、人の悪口を言って鬱憤を晴らしたいだけなのだ。
だから、『どっからそんな話仕入れてくるんだ?』というぐらい情報収集力は高い。東スポ以上である。
この連中、普段はサッカーなど見向きもしない。
「サッカー選手はチャラチャラしてていけません」
「そうそう、高校生でも髪が長いし」
「やっぱり高校生は五厘ですよ」
しかし、ワールドカップとなると話は違う。
にわかサッカーファンに大変身するのだ。
「いや~。実は私、高校までサッカーをやってたんですよ」
「あれっ、あなた野球部じゃなかったんですか?」
「掛け持ちしてたんですよ。野球部の顧問にどうしてもって頼まれたもんですから」
という具合になる。
「本田くんには頑張ってもらわなければなりません」
「私は大久保くんに期待してるんですよ」
「それにしても楽しみですな~」
野球がオリンピック競技から外れてから、2年に1度だけ、サッカーの話題で大いに盛り上がる。
そして、何故か
ふり向くな君は美しい
を熱唱したりする。
そして・・・
この惨敗である・・・
しかし、人の悪口がこの上ないご馳走である彼らにとっては、予想以上の成果なのである。
「ザックが!」
「長友が!」
新橋烏森口裏の居酒屋は、センター街以上の活気に溢れるのだった。