妄想のお話です
現実世界に帰れる方だけどうぞ
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「はい、おしまい」
ホットタオルで身体を拭われてパジャマを着せられて布団を掛けられる。
セッ/スをした後の潤はいつもの5割増しで俺に甘い。
そのくせ隣に潜り込んできた頭はいつも通り俺の腕の上だ。
「目覚ましかけた?」
「かけた」
「ちゃんと起こしてよ?」
自力では起きられないくせに朝食を作る算段をしようとするから溜息が出そうになる。
「朝飯より寝てろよ」
忙しいんだからどこかで手を抜けよと思うけれど根っからにストイックな男はそんな時ほど完璧に熟そうとするから厄介だ。
「もう大体用意してあるから大丈夫だよ?」
案の定、抜かりもない。
けれどそれでテーブルに突っ伏して寝てるんじゃあ意味がないと思っても口にしないのは今更それを言ったところで改めるとも思えないからだ。
お互い、気がすむようにしかできない性分なのは百も承知だ。
「…わかった」
渋々という態を装って返事を返すとそれだけで通じて"ありがと"と満足そうに微笑むからこちらも自然と口角が上がる。
ほとほとこいつの笑顔と泣き顔には弱い自覚はある。
いい加減慣れればいいのに性懲りもなくそれに一喜一憂してしまうのは一向にこの気持ちが薄れないからだろう。
「翔くん?」
気づいたらふわりとした手触りの前髪に無意識に触れていた。
明るい色味のゆるいクセのあるそれを指先で摘んで軽く引くと"どうかした?"と不思議そうな声が返った。
「髪、切るんだっけ?」
力を抜くとあっさりとそれは指先から抜け落ちて指先には何も残らない。
意識して掴んでいなければすぐに手のひらをすり抜けて行ってしまう。
まるで…
空虚になった指先はそれ以上の思考を続ける前にあっさりと捕まえられた。
白く長い指先が労るような仕草で指先を滑って手のひらごと包み込む。
心配など何もないと言外に告げる力強さにようやくほっと息を吐き出すことができた。
「たぶん、ね」
"弁護士が長いと胡散臭いでしょ"そう皮肉る唇は楽しげに微笑みを浮かべていてこれからの怒涛の日々に期待さえ滲ませる。
インプットを繰り返す時間は終わりを告げて背中で存在を感じる毎日が始まる。
自分の知らない誰かに変貌を遂げる様をまた目にするのだ。
「ねぇ、お願いがあるんだけど」
「ん?」
瞼が甘い声に重くなるのを僅かに感じながら返事をすると"寝ちゃっていいよ"とつないだ手を親指が優しく摩るから逆らうことなく身を委ねる。
寝てもいいよと言いながらも会話を続けるのだからと耳だけ辛うじて傾けていても、頭と身体が程よく疲れたところに心休まる体温と体臭で一気に眠気が訪れる。
(いまさらおねがいってなんだ?)
眠りの中に片足を突っ込んだまま考えても正しい答えが導かれるわけもなく、ほぼ考えるのを放棄したところにとんでもない願い事が放り込まれた。
「禁欲、しなくてもいい?」
「!?」
一気に目が覚めた。
目の前のちょっと困ったように上目遣いで窺う様からどうやら聞き間違いではなさそうだ。
「まつもとさん」
「なんでしょうか、さくらいさん」
期待通りの応答に破顔するしかなかった。
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放置すみません( ;∀;)
ぼちぼちいきますー