気象系の青さんの素人妄想BL小説です
side S
月が不在の闇夜に出逢った少年は
まだまだ幼い子どもで
微笑めば曇りのない綺麗な瞳だった
だから当時の俺は…
その輝きを奪いたくないと思ったんだ
「……………で…くれ…//」
『…………先生ぇ?//』
目の前の少年が
当時と同じ瞳の持ち主だと分かり
声になりきれなかった掠れた声が
その綺麗な瞳を
再び曇らせることになるのだとしたら
居た堪れない気持ちになる
それでも……
我が儘なんだと分かっていても
お願いを聞いて欲しいんだ
彼との未来をまだ諦めきれない
自分の為に………
「頼むから…ハァ…
…謝らないでくれないか?//」
『……でもッ//…僕のせいで翔さんは//』
「違う!!
智のせいじゃないんだ
…ハァ…あれは…
あれは俺が自ら引き起こした事故だ
お前は関係ない//」
『…でもッ//
先生ぇは僕を助けたばっかりに…』
智が向き合おうとしてくれた誠意を
受け取る為には
あの当時何があったのかを
話さなければならない
けれど、そのことを話すのは
智へは酷ではないのだろうか…
だからそれよりも先に
教えてはくれないだろうか…//
「…ハァ…なぁ…智
お前、何故俺に近づいた?//」
怖い
聞くのが怖い
でも…答えによっては
こいつの大切な人生を奪う可能性もある
もしそうなら…
この関係は
今すぐ終わらせなければならない
拳を全ての原因でもある脚の上に置き
ただ見つめて返事を待った
『……先生ぇ?』
「頼むッ!教えてくれ//」
『翔さんこっち向いて?』
「………でも//」
ぎゅぅぅッ //
『僕を見てッ‼︎』
拳の中に隠し持った感情は
コイツには全てお見通しなのだろうか…
勢いよく掴み取られた拳は
柔らかな指先の愛撫によって
徐々に隙間をつくり
形を保ち続けることは困難となり
いとも簡単に解かれてしまった
『……やっと見てくれた///』
ぽつッ…
ぽつぽつんッ…
「……智…///」
『…翔さんは
僕がごめんなさいの気持ちだけで
近づいたと思ってるんですか?』
ぽつぽつッ…
「違うのか⁈//」
『…はぁああ………やっぱり//』
ぽつんッ…
「…へ?//」
ザァァァーーー……
天気予報がハズれ
予想外の雨が…
繋がれた手や腕から先へ
丸い雫を落としては…
肌や衣服へ染み込んでゆく
そんなタイミングで
見上げた顔へ落ちてきたのは……
雨粒なんかじゃなく
「……智⁈///」
『逃げちゃだめッ//
…僕を疑った罰です///』
「……え……あッ///」
ふにぃ♡
この数ヶ月で思う存分知り尽くした
甘く柔らかなぬくもり
ザァァーーー……
『…んっッ…ハァ…嫌だと感じた時は
はっきり嫌って言うんですよね?』
「…ハァ…智…待てぇんんん⁈///」
繋がったままの両手が一つ離れると
その手が降ってきたのは…
とすッ //
『…んっ…ハァ…僕の心は…//
…ハァッ…他の誰でもない
僕が守るんですよね?///』
とすとすッ…
「んんっッ…ハァッ…それって…///」
突然の口づけで軽い呼吸困難に陥った
大きく揺れる胸の上だった
とすッ //
『僕はこれ(キス)が嫌じゃない…
ねぇ…先生ぇが言ったんだよ?
僕の胸をノックしたのは…
翔先生ぇだよ?///』
「…ッ…///」
叩かれた胸が痛い
自分の言動によって
数センチ先にいる
目の前の瞳を揺らしてる現実に
息を漏らすのが辛い
『僕は翔さんとする…この先の行為…
償いや哀れみで
してるんじゃありません』
「……智ッ///」
『知ってるでしょ?//
僕の身体が翔さんを迎えると悦ぶこと』
「なッ⁈///……何言って/////」
『だって……本当の事でしょう?///』
ザアァァーーー…
勢いが増していく雨足が
目の前の制服を湿らせると
次第に浮かび上がる
身体のラインと薄く透けた肌色に…
この場には相応しくない事が
脳裏に浮かび軽く目眩を感じた
「……つッ//…ハァ…」
『………風邪をひきますね//
行きましょう』
色香を放った綺麗な存在は
静かに視界から消え、
背後に存在を感じた時には
車椅子の車輪がゆっくり回りだし
俺たちの最初の出逢いの場となった
公園を後にした
ザザァァァーーー……
突然の雨に帰宅ラッシュの時間も重なり
通りに出ても
タクシーを捕まえることはできず
既に営業を終えた店の軒下で
雨宿りをしながら
この後のことを考えていた……
すると突然…
“ 僕の家が近いので ”
そう…
横に立つ智が俺を見て告げたが
それには待ったをかけた
教師と生徒であるにも関わらず
恋人という関係である手前……
向かう事を許してはいけない…と
理性を働かせ
進み出そうとした車輪を止めた
「悪いが……今日は少し考えたい…//
…お前はこのまま帰れ」
冷静になろう
こんなに身体を濡らして
俺ん家まで連れて帰るなんて有り得ない
それに…
つい数時間前に知った智の正体
16歳の生徒と知ってしまった以上
今の関係を安易に続けて良いとも思えない
お互いの為にも
今日のところは別々に帰宅すべきだ
そういう答えを出し
背後で車椅子を引こうとしていた
智へ提案した
けれど返って来たのは…
『……ゃ……だ…///』
ザザァァーーーー…
「…え?……何?//」
『翔さんはッ…//…ハァッ…
僕を拒絶するの!?//』
「はぁあ⁈……何を言うんだ//」
『先輩のいい様に…//
要求を呑んできた僕に…
軽蔑した⁈//
…あんな……あんな場所で
先輩の良いようにされた挙げ句
次第に感じてしまってた僕のこと…
気持ち悪いって思う!?//』
傘を持たない男二人
そのうち一人は車椅子
そんな状況でだけでも目立つのに
会話の内容が内容なだけに
行き交う人達が
傘越しにチラチラと覗いている
ザザァァァーーーー…
「おいッ…ちょっと落ち着け//」
『落ち着いてなんていられないでしょ!!
僕には翔さんが必要なのッ//
大好きなの‼︎
…ハァハァッ…
好きになっちゃったの……グスッ//
…ハァッ……ハァハァ…
嫌いになっちゃ…ゃだ…ょ//』
背後から聴きとれた言葉は
背中へ嬉しくも重くのし掛かる
「わッ分かった///…俺が悪かった//」
拒絶されるのは怖いのだろう
それまでの “ ですます ” を使った
丁寧な言葉ではなく
16歳らしい彼自身の言葉に乗って
智から湧き出る哀しみの感情が
一瞬でカタチを変え
俺に対して初めて怒りを露わにした
このまま帰らせたら…
コイツはきっと壊れる…//
「ちゃんと話そう……な?///」
『………ん…///』
けれど、それだと…
……俺はどうなんだ?
そっッ…
『では…僕の家に行きますね?
安心して下さい
母は夜勤で居ませんから…』
パシッ //
「…悪い//
家には行けない!!」
そっッ…と肩に置かれた手を
離さなよう勢いよく掴んだ
『…なんで?
なんで駄目なんですか?//
やっぱり僕のことッ…//』
「違う!!
それは絶対にあり得ない‼︎」
『…じゃあ…なんで//』
「ふはッ……分かるだろ?
家庭訪問じゃないんだ//
俺たちは付き合ってる…
家に上がり込んでみろ!
お前を欲っしない筈がないんだッ///」
『そんなのッ……僕は嬉しいよ?///
だって…
僕も先生ぇが欲しいもんッ///』
「ゔぅッ//……だから!
…俺とお前はもう
安易に続けていい関係ではないだろ?
ましてや生徒の家でなんて…
何か間違いがあって悲しむのは…
お前のご両親だぞ!!」
『………//…』
早くこの場を切り抜けなくては…
俺はいい
でも智が好奇の目に晒されるのは
今すぐ避けたい……//
「…な?…//頼む…
分かってくれないか?」
掴んだままの手を強く握り直し
親指で触れたところの骨格を
ゆっくり辿る様に愛撫する
「……今日のところは家に帰れ
また改めて話しをしよう…」
決して拒絶するのではなく
大切に想っているが故に
提案しているのだと……
その手に伝えた
『……分かりました//』
「…ホッ…じゃあ今日のところは」
『生徒の家じゃなければ
いいんですよね?
周りの目を気にしないで…
落ち着いて話し合える場所…
行きましょう♡』
『……は?//』
一瞬にして重たい空気が消え去り
智の引く車椅子に乗ったまま
雨の中、街のネオンへふたりで消えた
つづく・‥…─*
切ないから一変…?
どこに行くと思います?♡