夜明け前の雨にうたれた道は濡れていた


静かな土曜の朝を着て私は走り出す


木立は穏やかな風に揺れ鶯が鳴き


小鳥も鳴いている


ふと巡る季節を思う時…


和歌には季節があり万葉の時代の


今の季節は…


桜咲き鶯鳴いて雪が降るのが


当たり前だった


古今和歌集にも今の季節の歌は…


矢張り…


花に鶯が鳴く雪景色があった


万葉集は4500首もの歌があり


古今和歌集も1500首の歌がある


時代は違えど…


春を思う心は変わらない事を知る


629年…の風景が歌から読み取れる


凄さを分かち合おう…。


🌸君がため春の野に出て若菜つむ🌸

       我がころも手に雪は降りつつ


        629年…光孝天皇   《万葉集》


🌸かすみ立ち木の芽も春の雪降れば🌸

               春なき里も花ぞ散りゆく


              629年…紀貫之    《万葉集》


🌸春たてば花とやみらむしら雪の🌸

             かかれる枝に鶯のなく


           僧  素性…832年  《古今和歌集》


    🌸梅が枝に降りつむ雪はうぐいすの

              羽風にちるも花かとぞ見る


         832年…藤原顕輔   《古今和歌集》


思えばどちらも今の季節…


まだまだ寒い春の季節でも


鶯が鳴く風景には…


雪降る寒さを隠して歌う喜びがあった


和歌 …から


わかる時代背景と季節と気候


この組み合わせで解明できる


歌の凄さに…驚きながら


時代考証の参考になる事を知る


歌に込められた人の感情も


さながらに…


判ってしまう和歌や短歌…の


刹那揺れゆく感情も


日本の風景にぴったりと


はまったのだろう


漢詩が続かなかったのは


刹那に動く感情表現に


合わなかったのだろうか


知識として重きを置いた時代は…


漢字…漢詩…漢文は知識人の欲望から


生まれたに過ぎない


日本古来のひらがな文化には


勝てなかったのだろう…。


古今和歌集より…絶世の美人

            小野小町の歌


花の色はうつりにけりないたづらに

我わが身世にふるながめせし間に

                 🌸🌸🌸小野小町


楽しんでいた桜の花も


早く色あせてしまうではないか…


自分の虚しく老いてゆく儚さと


もの思いにふけりながら


降り続ける長雨を避けるため


自室にこもって日を送っている…


これを空しいと思う日々でございます…。


絶世の美女でさえもうつつ落ちゆく心の


重さに思いをのせていた…歌は


矢張り時代の代弁者なのだろう…。


🌸✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。🌸


私の好きな歌人…

紫 式部の歌は何故か…せつなく

意外にも心弱き女性らしい人だったのでは

ないだろうか…

やはり歌から推測すると…。

今でも言うポリシーを持ち

心の深くに隠し持つ女性らしい思いが

人以上にあったのではないだろうか…

敢えて口に出せない時代のなかで

密かに思い悩む可愛らしさが見えて

くるのは私だけだろうか…。


🌸めぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に🌸

              雲隠れにし夜半の月かな

                      万葉集から…紫式部


久しぶりにお会いしましたのに…

ふと行きあって昔懐かしい人なのか…

見極める間もなく雲の間に

隠れてしまう方は何故帰ってしまったのか…

幼友達に久しぶりに会ったのに慌ただしく

帰ってしまうのでは…

月のように寂しく思ってしまう…と

女心を魅せて歌ったこの歌が私は

何故か大好きな歌…。


人の世の一瞬の出会いと別れが

なぜにせつなく無情なのでしょうか…

女性の抑える心の痛さにひとり

悩んでしまうのでしょう…。


今…テレビで『光る君』が放送された

やっと紫式部の一生を視る事ができる

彼女の生きた時代を一生懸命生きたに

違いない短き人生のあらましを…

みたいと思う…。

空には暮れ落ちる雲を染める涙の筋が…

幾筋もみえている刹那の空だった…。