去年兄の会社が突然倒産した
とてもブラックだったし
それはそれで仕方がないと思う
だけどそこからまた仕事が決まらない

兄はとてものんびりしていて
父はそんな兄にいつもキツくあたる
以前兄のバイクの周辺が草だらけになると
綺麗にしておけと怒鳴りつけた
だいぶ経ってから兄が草むしりをすると
仕事もしないで草などむしるなとまた怒鳴る

父はもはや兄のすべてが気に入らない
なぜこんな人間になったのか
土地をあてにして仕事をしないなら
俺が死ぬ前にすべて売り払い
お前らに金など一円も遺してやらないと
朝から母を責め立てる
一体兄は誰に似たのかとわめき散らす

私は
兄は父に似ていると思う
父は私が中学生頃から仕事をしなくなり
母がいくら生活が苦しいと言っても
職に就かず
先祖が遺した土地を切り売りして暮らした
それでも足りない私たち兄妹への仕送りは
母が朝から晩まで働いて賄ってくれた
くたくたになって帰宅した母に
夕飯は簡単に作れなどと言って
自分は趣味の骨董磨きに興じていた

兄は父によく似ている
だけど自分の人生の不甲斐なさを
人に当たり散らさないだけ
よほどましだと思う

それとも
母がどれだけ責められても動かない兄も
父と同じなのだろうか
ここにこうしている私自身も

今さら言っても仕方がないが
なぜ母はこの男と
さっさと別れなかったのだろう

もうすぐ
父の誕生日がくる
父は家族の誰よりも長生きして
思い通り幸せに暮らせばいい
私の残りの寿命も全部あげるから
立派に理想通り
一人で愉快に生きていけばいい
最近本気でそう思ってしまう

でもきっとそうはならない
だから
父と暮らすこの地獄は
これからもまだ続いていくみたいだ