何処かに隙間があった様だ
3日前から無職です。6
その本を借りたい。
しかし、本をしまう袋がない。
図書館で本を借りて、カバンや袋にも入れず、素で持っていく奴がどこにいる。
そんな奴怪し過ぎる。自分が受付のおばさんだったら、そんな奴ちょっと嫌。
私は、なりたての無職だが、プライドは高い。
逆に無職だからこそプライドと志は高くありたい。
うかつだった。
無職の私が唯一、無料かつちょっとインテリチックに楽しめるスポットだと思ったのに。
「その場で読めば」なんて、思ったら大間違い。
この日は、図書館午後休日。タイムリミットはわずか。
私は一度本棚から抜き出したその本を戻し、受付のおばさんに軽く微笑みながら図書館を出た。
向かったのは100円ショップ(ロージーというお店)。
ここで本を入れる袋を買うんや。バッグでもかまへん。
ロージーに入る。そこには色とりどりのビニール製のバッグが並んでいた。
赤のチェック、青のチェック、緑のチェック、黄色のチェック。
色とりどりと言ったが、まあこんなラインナップ。
A4サイズの本が縦積みで30冊くらい入りそうな大きさと形。
本はたくさん入りそう、ということでそのバッグ(赤のチェック)を購入。
外が寒かったので、グリーンのマフラーと黒手袋も購入。
完全装備、これで図書館攻略や。
戻った図書館。まずはトイレでマフラーを綺麗にしめなおしてっと・・・。
鏡に映った自分を見て愕然とする。
坊主頭が少し伸びた髪、
3日ヒゲを剃っていない無精ひげ、
黒いジャンバー、
黒いズボン、
黒い汚れたブーツ、
そして不似合いなグリーンの100円マフラー、
サイズが小さく伸びきってはちきれそうな100円黒手袋、
そしてビニール製の大きな100円手さげ袋(赤チェック)。
難波駅とかによくおるホームレスやん、俺。
ビニール袋になんやかんや入れとる、あの。
落ちるのは早かった。
無職から3日目。
鏡の中には、とてもとても立派なホームレスが立っていた。
つづくかも
3日前から無職です。5
午前九時30分。
ついに図書館の開館時間に。
さっき自分を拒んだ自動ドアーを、無理やり開いてやる。
だまって、その口を開きな。
ぶいーーん
開いた自動ドアーの中から出てくるオッサン。
しけた顔してやがる。
平日の昼間から図書館入館なんて、よっぽど暇らしい。
同業者だな、うん。
その出会い、というかすれ違いには、無職同士の親近感はまるでない。
このオッサンみたいにはなったらあかん。
少し人生がクロスしただけ。もう会わないからね。
図書館だけあって、本がたくさんある。
一冊が目に飛び込む。
「フリーという生き方」
なんて自分にぴったりフィットしたタイトルなのだろう。
私は、無職ではない。フリーなのだ。
ついに手に入れたよ!!! この称号!!!
しかし、
その30分後。
私は、即席ホームレスと化してしまうのだった・・・
つづく
3日前から無職です。4
図書館の周りを一周しようと歩いていると公園に着いた。
7メーター程の道の両サイドに植木をし、申し訳程度にブランコなどの遊具を置いただけの公園。
幸い、ベンチもあった。
座ってみる。
自転車に3歳くらいの子供と2人乗りした主婦が、白い目で通り過ぎる。
そういえば、ヒゲもしばらく剃っていない。
確かに不審者だよ俺は。
しかし、違反はしてないぜ。ベンチに座っているだけだぜ。ベイビー&シスター。
自転車の2人乗りって違反なんだぜ。俺よりも白い目で見られるべきは、あなた達だ。
そういえば、しばらく時計をしていない。
強い、狂わない、止まらない。と3拍子そろった優秀な時計を買ったはずだが、ベルト部分が壊れた。
一度ならまだしも、通算3度目。
ゴッツいショックや、Gショック。
今は窓際でソーラー充電にのみ没頭中のGショック。
直そうという気がおこらねんだよ。3度も壊れられたらよー。
ということで、現在時計不所持。
2台目の、違反バリバリ、おばちゃん&ベイビーチャリ2人乗りが通り過ぎる。
図書館開館まで後何分だろう。
こんな時は、時間は予想以上に進んでいないものだ。
暇すぎて、公園の植木を観察してみる。
1本面白いものがあった。
金属製のプレート(20×35センチくらい)を半分体内に飲み込んだ高さ5メーターの中木。
成長過程でいつの間にかそうなったのであろう。
なんか近未来。
バイオと科学の融合か。
歴史の証言者か。
時計はなくても時は進む。
つづく
