「確証バイアス」で導き出した解答を、「消極的事実の証明」で答え合わせする。


「だって、実際に治った人がいるんだから。ブログや本に書いてあるの。なんで治らないって言い切れるの?」





こんなやりとりをしてしまうこと自体が、大きな失敗で、標準治療を受け入れてもらえるほどの信頼関係に再構築することはもう絶望的だと、僕の調べる対象が癌の治療法から人の説得法へ移行した頃に理解する。そもそもそれ相応の信頼関係があれば、誰にも打ち明けずに癌を自分だけで治そうだなんて考えにはいたらなかったかもしれない。

後悔は際限なく遡るし、無力感と喪失感もよたれかかってくる。そしてまた、もう終わってしまったことだということを、何度も忘れる。