「王様…長らく王宮を留守にし
誠に申し訳なく思うとともに
無事に戻った事
ご報告申し上げます」
康安殿にてウンスと二人頭を
垂れるヨン。
「無事に戻り何よりじゃ。
王妃が待ちわびておったぞ。
婚儀、婚儀と尚宮とともに駆けずり
回るものだから、余は振り回され
てばかりおったのだ。故に
これで余は解放されるのじゃな」
「はっ!」
「王妃を呼んで参れ。
首をながくして待っておった故」
「王様?すでに戸口の向こうに
控えておりますればお入れしても
宜しいでしょうか?」
常にお側近く控えるドチ内官が
笑みを浮かべながらそう問うと
王様が「そうか、お入り頂け」と
応えるのと同時に王妃様自ら戸口を
お開けになった。
満面の笑みをお浮かべになり
玉座前へと歩みよる。
「王様・・・すみませぬ。
妾が・・・」
「よいのだ王妃よ。
気がせいておったのだな?
珍しき事よのぅ~王妃が
どたばたと戸口を開け
駆け寄るなどそれほど待ちわびて
おったと承知しておるぞ」
「・・・お恥ずかしゅう
ございますれば・・・ですが
待ちわびておりましたゆえ
お許し下さりませ。あ、姉上殿
お待ちしておりましぞ。
肌の艶(つや)も艶(あ)やかの様子
にて良いことがあったので
ございますね・・・」
「王妃様?な、何を薮から棒に…
王妃様こそ変わらぬ美しさで
健やかにお過ごしの様子で
安心致しました、うふふ」
見抜かれたとウンスは
頬を染めながらも
笑って誤魔化し、うまく
話を逸らせたと思いヨンを
ちらっと覗きみると
あろうことか耳たぶが真っ赤に
染まっている。
『あちゃ~隠し事が下手なんだから
・・・』と胸のうちでそう
思ったウンスである。
「なんと!真か?王妃よ。
二人は既に契りを交わしておると
そう言いたいのじゃな。
目出度い!!護軍にも跡継ぎが
生まれるのも直に訪れようぞ。
待ち遠しいのぅ~チェ尚宮?」
王妃様より
一歩下がり控えるチェ尚宮は
苦々しい顔させ頭を垂れていた。
長い二人旅で予測は出来ては
いた。が、堅物で知られた甥の事
よもや婚儀前に契りをかわすとは
「でかした!」「愚か者が!」
と、どっちの感情も腹のうちで
渦巻いていたのである。
それからしばし康安殿にて
雑談を交わし土産を渡しにウンスは
王妃様の館へと脚を運び
ヨンは王様と共に王宮内を散策に
赴いたのである。
「この場をそなたに見て欲しい
と思うてのぅ~。
庭師が手入れに苦労しておった。
王妃が無理難題を強要するものだから
逃げ出す者も現れる始末であった」
王妃様が住まう坤成殿中庭には
数々の花花が所狭しと植えられ
赤、青、紫、と艶やかな色味を
纏わせ、明日の婚儀に華を添えようと
している。
新郎、新婦が腰を下ろす上座も
二組用意され王様や王妃様も
同席されるのが見て取れる。
「王様や王妃様と同じ上座など
・・・一家臣に過ぎぬ某らが
恐れ多い事にございます」
「王妃の我が儘じゃ。
だがの、余もそなたを一家臣とは
思ってはおらぬぞ。
友であり家族と思うておるのじゃ
兄でもあるそなたを弟夫婦が
祝って何が悪い?
これからは余と王妃、護軍と
医仙、この地に子孫を残し
その絆を未来永劫続く頑強なる
ものとしようぞ」
「はっ!・・・」
そしてウンスも戻り
二人は明日の婚儀を控え
夕暮れには屋敷へと
戻って行ったのであった。
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