愛しき人(一話完結) | シンイ二次小説でんべのブログ

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皆様お久しぶりです
本編も後僅かになりましたが
一話完結でお話を描いて
みました。
ヨンが先に・・・・。



愛しき人

雷はあの人の分身
若い頃は嫌いだったが
一人残された今は
へっちゃら。
だって身近に感じるんだもの
貴方を。

ゴロゴロともう随分鳴いている
空を、年老いたウンスは
屋敷の中庭から見上げていた。

高麗から朝鮮王国と時は移り変わり
チェ・ヨン大将軍は斬首と言う
極刑に処され三年の月日が
過ぎた。

「ヨン・・・?
貴方が逝ってしまい
私もすぐに後を追うつもりで
いたのよ。でも私は医者だから
それは私は出来なかったの
許してね・・・。
天命を全うするのが私に
化せられた使命だと思っているの
でもさぁ~、近頃は布団を
暖める日々が続いていて
なんだかつらい・・・早く
迎えにきて欲しい。
だって幾つになったと思う?
八十よ八十・・・
こんなに長生きするとは
思わないものねぇ~。
見て、多分髪は白髪でいっぱい
手はシワだらけでね
今の私はヨンには見られたくない
かも。
でね?朝鮮王国の創設者で
あった李成桂はもういないのよ
今頃ヨンと会ってたりして
・・・ヨンが斬首を受け入れる
変わりに家族を守ってくれと
李成桂と約束したんだってね
・・・知らなかった・・・
どこまでも自分より家族を
第一に考えて生きてくれたわ。
本当にありがとヨン・・・。
でも寂しいしもう精一杯
生きたでしょう・・・クスン…」

その時だった。
分厚い雲で覆われた空を
今日一番の雷がゴロゴロビカッ
と光り、灰色の雲をなぐるように
縦横無尽に雷光が走り始める。

「きゃ~!!」

「母上様~~」

「あら、貴方戻っていたの?
びっくりするじゃない。
お役目放り出してきたのと
違うの?お父様みたいな事
しちゃだめよ」

「たまたま市中見回りの番でして
通りすがりに様子を伺いに
寄ったら母上の気が乱れていたの
です。故に飛び込んでまいりました
大事ないですか?」

愛しき人の生き写しとまで
言われた嫡男。
朝鮮王国の番人とまで
言われるまでにのしあがり
父親同様家族を一番に考えて
行動していた。

「さぁ戻りなさい
大雨になるかもしれないわ。
民の命が第一優先でしょう
母は大丈夫だからね」

「ですが母上・・・」

その時一瞬辺りが真っ暗闇に
包まれた。
その闇の遠くからと言うより
何やら物体がまるで
天から地上へ階段があるのでは
ないかと思われるように一歩一歩
降りてくる。
その様子はと言うと
甲冑のような装いと手には
何やら握りしめていた。

「母上!!父上です。
父上が会いに来て下さいました」

ウンスはその声に反応はしていたが
真っ直ぐその姿を凝視している。

忘れる筈がない
生涯ただ一人愛した男。
出会いは最悪ではあったが
そばにいると安心し
素の自分でいれた。
我が儘も苦笑いを浮かべながら
聴いてくれた。
唯一無二であり魂の片割れで
あった。
ただひとつの不満は何の相談も
なしに極刑を受け入れ
先に逝ってしまった事だ。

ウンスは涙に滲む眼で
じっとその姿を見ている。

「ヨ・・・ン・・・」

その姿がくっきりと鮮明に
写し出され年老いたウンスの華奢な
身体は軽々と持ち上げられた。

「わっ!ヨン」

「ウンス・・・泣いてはならぬ。
俺はウンスを守る為ならこの命など
ほしくもない。故に泣くな」

「バカ、バカ!!ひとり残されて
どれだけ寂しい思いをしたと
おもってるの?バカ!ヨン!」

老いても若かりし頃と変わらぬ
涙と物言いでありヨンは
その掌で優しくそっと拭いてやって
いる。

「天からずっと観ておったのだ。
今宵は名月ゆえ抜け出せたのだが
番人が怒っておる故戻らねば
ならぬ・・・ウンス?
達者でおれ、泣いてはならぬぞ。
俺は眠る事を知らぬ身ゆえ
ウンスのその時まで監視しを
怠らぬぞ。
他のおのこに笑みを浮かべては
ならぬし、酒もならぬし
屋敷に招くのもならぬ。
守れるな?」

「もぅ~ヨンの悋気は
健在なんだから、涙もどこかへ
飛んで行ってしまったわ。
うふふ・・・でも・・・」



「母上?母上様!!」

雷まじりの豪雨の日
役目を終え、屋敷に戻り縁側で
眠る母を見つけ嫡男は
顔色を変えていた。
ずぶ濡れになりながらも
その瞳を開く事なく
横たえるウンス・・・。
脈も触れてはみるが波打つ事はない
しかしながら母の口角が
上がってみえるのは気のせいか。

「父上がお迎えにいらしたので
ございますか?・・・母上?
母上様は偉大でございました。
天界より参り、父上と結ばれ
私めに生を与えて下さり
誠にありがとうございました。
感謝の言葉しかありませぬ。
どうか、どうか父上と安らかに
お眠りくださりませ。
父上と母上の子に生まれたこと
幸せにございました。」

ウンスの夢だったのだろうか?
愛しい人に触れ
ウンスは口角を上げたのだろうか?
それは今では知る由もないが
そうであると信じて止まない

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