生きる意味(甦れ) 6 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「テマン?ユ・ウンスと言う名に
覚えはないか?」

「へっ…なんか言いましたか?
風が強くてよく聴こえません…」

「・・・もうよい・・・」

愛馬に跨がり市井をゆるりと進む
ヨンの横を飛び跳ねるが如く
テマンはきょとんとした
顔でヨンを見上げていた。
生憎の強風に低い声はかき消され
テマンの耳には届かなかった…。
それからしばらくし
屋敷門へと二人と一頭は到着する。

ヨンの愛馬チュホンが
屋敷到着とともに「ぶるるる」っと
忙しなく雄叫びをあげ、蹄で地面を
蹴り落ち着きがない。
「人馬一体」そんな言葉が
あるようにチュホンは主であるヨン
以外背に乗せることも従うことも
ないのである。
戦場では丸々で愛らしい眼を
きりりと引き締め敵を蹴散らしながら
威嚇する…そんなことは朝飯前であり
だれに指示されるわけでもなき
常に主と思いが同じであると
・・・そんなチュホンが・・・。

「如何したのだチュホン…」

主の問いには応えることなく
厩舎ではなく屋敷をじっと見つめ
「ぶるるる」と遠吠えのように
嘶くチュホンであった。

何度も鬣をなででやりどうにか
落ち着かせると手綱を使用人に渡し
ヨンとテマンは屋敷の中へと
脚を踏み入れるのである。

「もどった」

「お帰りなさいませ旦那様」

どこかぎこちない正室恩讐の出迎えで
ある。

「使用人らは?」

これまたぶっきら棒に問う主である。

「私の言葉が理解できないようで
厨房に引き上げ 夕餉の支度を
させております」

「そうか…こやつは俺の私兵テマン
これ先何かあればテマンに用事を
頼むとよい」

「テマンさん・・・宜しくね
うちの旦那様のお世話は手が掛かる
でしょう?」

「い、いえそんなことないです
おれはテジャンの私兵ですから」

「テマン?お前もこの方の言葉が
分かるのか?」

「は、はい!」

正室の言葉が分かるのは
己だけと思っていた男ではあったが
唯一私兵であるテマンが
その言葉が理解できると知れば
複雑な思いが込み上げるのである。

「テジャン!?チェ尚宮様も
分かっていると思いますよ
話してましたから」

「・・・」

『俺ともあろうものが・・・
まったく…使用人には通じず
・・・!!!』

走馬灯のようにその男の前に
景色が繰り広げられる。
天界に通じると言われた門を
潜り、赤い髪の神医を担ぎ
戻ってきたその景色・・・。
見たことも触れたこともない
器具を用い、賊に襲われ
瀕死の傷をおった王妃を救った
神業・・・。
四年もの別れからこの地に戻って
くれた愛しいウンス・・・。

「あの折、事切れた貴女を胸に抱き
俺は誓ったのだ。幾世隔だたれようとも
必ずや貴女を探しだし再びこの腕に
抱くと…ウンス・・・」

「はぁ~~?ち、ちょっと待って
話が見えないんだけど」

「俺と同じ所に傷があろう?
俺が貴女の後をおった証・・・」

切なげにその名を呼び
一歩二歩と正室である恩讐の前に
歩を進め
その男は藍色の衣の上半身を脱ぎ
へその脇にある刀傷の後のような
皮膚のひきつりを見せる。

「きゃっ~…な、な、なにを・・・
なさいますか!」

そう叫ぶと
両手で顔を覆い俯く正室。
その腕をそっと退けるとこう呟く。

「俺を見よ」

その黒曜石のような瞳には
涙を浮かべいた・・・。

『へっ?テジャンが後をおった?
うそだ!テジャンはいまここにいる!
テジャンは死んでなんか・・・!!』


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