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大護軍が刺されたとテマンから
知らせを受け息も絶え絶え
急ぎ駆けつけたイルムとアル。
見れば頭部には白い淡雪が積もり
つつある。
「奥様!遅れてしまいました
大護軍様の具合はどうでしょう?」
「急がせてごめんなさいね
イルムちゃん、アルちゃん
寒かったでしょう…大丈夫よ
脈が少し早いけどこの人
強靭な肉体の持ち主だから…
わかるだろうけど
刃物は抜いてないのよ」
アルの問いにそう応えるウンス。
気丈に振る舞っては見えるが
髪はボサボサで白く透き通るような
肌も色褪せて見える・・・。
「でもね…麻酔がこちらでは
まだないのよ…困ったわ
はぁ~~・・・」
『まてまて…勝手にないと
決めつけない』
トギがひっこりと顔を出し忙しなく
指を動かす。
近頃はウンスもその指を読める
ようになっていた。
「えっ?ほんとトギ?
出して早く!」
ばたばたと薬房へ消えると
すぐに吸引麻酔薬と思われる
筒を抱えて戻ってくる。
『説明は後。私と侍医が試行錯誤を
繰り返し仕上げたんだ間違いない』
「わ、わかったわ…みんな!
手を貸してちょうだい
この人を助けたいのよ
普通医者は身内の手術はしない
ものなのよ、感情が入り手元が
狂う可能性があるから
でも私が助けなきゃ誰が助ける?
そうでしょう…器具を煮沸消毒して
ちょうだい!さぁ~二人ともこれに
着替えてそして口元はこれで
覆ってちょうだい…」
「はい、畏まりました」
渡された白い衣を手に取ると
仮眠室と思われる部屋へと
案内されすぐに着替え戻ってくる。
「ヨン?苦しいわね…すぐに
終わらせるからもう少し我慢してね
いつも私を庇ってくれて
あ、ありがとう…今度は私が
貴方を呼び戻すから」
医療棟の外にはチュンソク、テマン
トクマンら迂達赤と甥が刺されたと
知らせを受け急ぎ駆けつけた
チェ尚宮と女官サンミの姿も見える。
『そうじゃ…ウンスゃ必ずやあやつを
・・・信じておる故』
ウンスの呟きが外まで漏れ
チェ尚宮は胸の内で手を合わせる
のであった。
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