愛しき薫りを求め (動きだす時) 6 | シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説を書いています

「命がほしくば剣を捨て降伏せよ
さもなくば切り捨てる」

ウンスと王が待つ一室の廊下で
部屋に気を張り巡らしながら
蒙古軍を睨み付ける。

「我、蒙古軍指揮官イェグ
我ら蒙古の精鋭ばかり高麗軍など
取るに足らず!モンケ皇帝の詔
(みことのり)をも応える事なく
夜討ちを仕掛けるなど、無礼千万。
よって、我自ら成敗に参った!」

「・・・ふっ、よく回るその口
黙らせるが構わぬか・・高麗軍!
手出し無用!怪我でもされたなら
あの方が悲しむゆえ」

ヨンは周りを取り囲む高麗軍に向け
声を張り上げる。ヨンから醸し出される
気迫におされ高麗軍は、一歩二歩と
後退していた。

音もなく鬼剣を抜くと、丹田に
気をあつめる、みるみる剣先まで
雷功が溢れでヨンの眼が開くと
鬼のような形相に早変わりしていた
イェグら蒙古軍もこの世のものとは
思えぬヨンの形相を目の当たりにし
知らず知らず後退りしていた。

「きぃ~ん」っと剣の交わる音が
静まり反った廊下に響く。

襲いかかる兵士をばさりばさりと
ヨンは造作もなく斬り捨てる。
雷功を纏うヨンに敵う筈もなく
蒙古軍はばたばたと倒れ込み息絶える

「まだ歯向かうつもりか!」

「・・・お主何者?」

「旅の者に過ぎぬ 訳あって高麗軍に
加勢しておる身、名などいらぬ」

イェグが息を切らす中
ヨンはその戸口から離れる事なく
汗ひとつ滲ませてはいなかった。

そんな中、ヨンを疎ましく思っていた
武官のひとりが、ウンスと
王が身を潜ませる一室の戸口を静かに
開く。

殺気を纏うこの武官をチュホンは
じっと監視するかのように
見つめている。

「いやはや、そなたの婿殿には
敵わぬ…時期に片がつく様子である
口だけではないのだな」

「あたり前でしょう!ち、ちょっと
近寄らないでよ」

「な、何を警戒している?
ともに高麗軍の仲間ではないか…」

「仲間?どの口が言うのかしら!
昨日は斬り捨てよと言ってた癖に
ふんっだ!」

ウンスはそう言うと、そっぽを向く。

ヨンはすっと姿を消した武官を
目の端に捉えていたが、その場を
動くことは出来なかった。

『俺が動けば残党が雪崩込む
・・・チュホン頼むぞ』

そう腹の底で語り掛けると
一気に片をつける為大声を張り上げる

「高麗軍!!撤退!」

「な、なんだ…何が始まるんだ」っと
高麗軍が互いの顔を見合せ
ざわつき始める。

「巻き添えを食らうぞ!はよう
せぬか!!」

一室の前、ヨンの目の前には
イェグを筆頭に、三十名ほどの蒙古軍が
残る。
再び丹田に気を集め
指の先から雷功が溢れ始めると
ヨンの身体を駆け巡る雷功。

この場で放つのは本意ではない
されど、ウンスのもとに急がねばと
気だけがせいていた・・・
ふっ…っと短い息を吐くと
その指先を蒙古軍に翳す。

次の瞬間!ドッカンっと蒙古軍が
吹き飛ぶ。

「ふっ~。縄をかけ労に引っ立てぃ~
残りの兵は、急ぎこの場を始末せよ
王様や王妃様の目に触れさせては
ならぬ!よいな!」

「「「おお~~」」」

客人に過ぎぬヨンの激に
高麗軍が従う…長い月日をかけ
信頼を築きあげてきた仲間のように。


一方、一室のなかで
同時進行していたのは・・・

この武官が睨み合うのはチュホンだ
武官が右へ動けば、行く手を阻むように
チュホンは左に動く。

「はっ、なんだ!邪魔な馬めが
通さぬか」

「ぶる!」「ぶる!」っと
鼻の穴をひくつかせチュホンも
負けてはいない。
天幕の中では王がその様子を
じっと見つめている。

「だからね!近寄らないでよ
チュホンは賢い馬なのよ、あんたの
邪悪な考えなんてお見通しなんだから」

「ぎゃあぎゃあと、うるさいおなごめ
目にもの見せてくれるわ」

武官であるこの男、ましてや戦の最中
剣を持ち合わせても不思議はない。
その剣を抜くと同時にチュホンが
「ヒヒーン」っと前脚をあげ威嚇する

「わ、わぁ~危ないではないか!」

逃げ回る武官を壁際まで追い詰め
チュホンは後ろ脚で蹴りあげ
天井まで武官の身体が届くと
どさりと床に叩きつけられる。

次の瞬間
戸口が開きヨンが飛び込んでくる。

「イムジャ!大事ないか」

「ええ…大丈夫よ・・チュホンが
この通り守ってくれたわ」

ウンスが指差す床に目をやれば
武官の泡をふきのびていた。

「チュホン…良くやった」

「ヨン!怪我はない?」

そう呟くとウンスは頭の先から
足元まで瞳を走らせる。
医学の基本であり目視で外傷が
ないか確かめるためであった。

「うん、大丈夫ね…良かったわ
チュホン、凄かったんだから
刀にも動揺しないで向かっていったの
見せてあげたかったわ
ねぇチュホン?ほんとうにありがとう
大好きよ」

ウンスは鬣を優しくなでチュホンの
長い頬に、ちゅっと唇をあてる。
ヨンの眉がぴくりと動いたのは
言うまでもない。

「護軍、ご苦労であった
片付いたのであろう?」

「はっ!王様こちらはすべて
終わりましてございます。あとは
崔沆殿が戻れば次の策を練らねば
なりますまい」

「相わかった。では崔沆が率いる
軍の帰還を待つとしようではないか」


それから四半刻ほど過ぎた頃
「医員!医員~~」っと
だみ声が王宮に響き渡っていたのだった



諸王(イェグ)は史実では1252年に
軍を引き連れ登場しているようですが
別の目的でですが…時は同じ1252年
春先の出来事なので
この場に登場頂きました。

諸王とは… 親王の宣下がなく、また、臣籍にも入らない皇子・皇孫のこと。


ポチっとして下されば嬉しいです






にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村