木春菊  [託す] 58 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「なんと!…」

ソウは、寝静まった屋敷に戻り
一瞬躊躇いはしたが、事の重大さを
踏まえ、ソウは閨の前で
ヨンに声を掛けたのである。
実際、人の気配に敏感なヨンが
声がかかると同時に、閨の戸口を
開けていたのだが。

「すまぬがソウ…明日の朝テマンと
ともにもう一度屋敷に忍び込み
妻子の居場所と、そやつらの数と
裏で操る、奇皇后の息子の情報が
ほしい…」

「分かりました ヨン様…このような
時の為に、スリバン…ソウがいるの
でございます。奥方様には指先ほど
でも触れる事はさせません」

「ふぅ~。頼りにしておる」

きりりとヨンを見据え
ソウは口にし、一礼すると
自身の部屋へと戻る。だが・・・


「ヨン。どうしたの?
今のソウの声よね。何か問題でも・・
ああっ…」

ヨンが戸口を開けると
ウンスはあくびを溢し眠い目を
擦りながら問いかけていた。

ヨンは事の仔細を伝えると
ガバッと、上体を起こす。

「ヨン!なに言ってるの…質って
人質に取られているって
ことでしょう?助けに行かなきゃ
明日の朝なんて悠長に構えていちゃ
いられないじゃない。例え遠縁でも
貴方の身内に変わりないんだし
もともとね…貴方が面倒だからと
領主をしないから、身内をいざこざに
巻き込ませたのよ。ヨンにも責任
あるんだからね!」

「ウンス・・・敵を知らねばうかつに
動けぬ。ソウの話によれば
丁重に扱われておる様子
焦ることはないと思うぞ。」

「そう?…でも大丈夫かしら・・」

ウンスはそう呟くと、ぼぅ~と
若かりし頃読んだ古文書を思いだして
いた。

『確か元は滅び明と言う時代が来て
・・・奇皇后の没年は・・記載されて
いなかった。息子のなんとかは
モンゴルのどこかに奇皇后と逃亡し
兵をあげ政権を奪還するために
戦を仕掛けた筈・・・だったかな~
あぁ~もっとしっかり勉強して
おくんだった・・・あぁ~~。』

ウンスは頭に手をおき
くしゃくしゃにかき回すと
こてっとヨンの胸の上に伏せる。

「如何した…?ウンスのその癖は
よからぬ事を考えてはいまいな」

「な、なによ!私はそんな無謀な事は
しません!そりゃ~、一人で徳と
ディールに出掛けたりキ・チョルとも
あの手帳欲しさにいろいろやったけど
そんな若くはありません!」

「ふぅ~。ならば良いが・・
夜が明ければソウとテマンが
探りをいれるゆえそれまで
それまで待つしかあるまい…」

「わかったわ。でも心配よ
ヨン…人が巻き込まれないように
ちゃんと、領主の役目をしなきゃね
貴方が領主と耳に入れば、とんでも
事を言ってくる無謀な人も
いなくなるでしょう。ましてここには
迂達赤の名手と言われた人が
二人もいるんだしテマンもいるわ。
それにしても・・・いつまでも
あの男…キ・チョルとの因縁が
断ち切れないのよね・・・
天界に行きたくて、一人で自滅した
ようなものでしょう・・・。
なんでいまさらよ!逆恨みも
良いところだわ。」

「実際の姿を誰も見てはおらぬゆえ
俺が直接手を下したと
思っておるのであろう…
奇皇后も、幾度も戦を仕掛けて
参ったゆえ…高麗がどうのこうのとは
大義名分であって、根底には
兄の敵討ちがあったのやも知れぬな」

「そうだったのかも・・・高麗出身の
人が故郷憎しなんて考えたくもないわ
敵討ちが奇皇后の気持ちに
拍車をかけて何度も戦になったのかも
知れないわね・・・。」

「まだ夜も明けぬ。眠らねば
身体が持たぬゆえ…」

寒がりなウンスをその胸にしっかりと
抱きしめ
ヨンとウンスは瞼をおろした。


よく朝日が昇ると同時にテマンと
ソウはあの屋敷にいた。

「ソウ…領主は兄上の親戚筋
悪さに加担するような人ではないと
思うけど、妻子を人質に取られている
なら、人って考えが変わるかも
知れない・・・だから妻子の居場所を
掴むのが先だ…頼むぞ」

「はい…テマン殿お任せを」

テマンとソウは、二手に別れ
ヨンの遠縁にあたる屋敷の屋根裏を
音もなくあちらこちらと探し回る。

『ん?話声だ・・・』

夜が明けたと言っても
屋敷の使用人が動き出す刻限には
早すぎる。
それに母屋に使用人はおらぬ筈と
テマンは静かに屋根裏の戸板をずらし
中を覗き込む。

身を寄せ合う妻子と使用人と
思われる者らの姿だった。
見渡す限り見張りは戸口付近の廊下に
人影が見える。

『結構いるな・・・一人では無理だ』

「母上…どうにか逃げ出して番所に
逃げ込めないものでしょうか?」

「駄目よ。私達が逃げ出せば
父上が殺されてしまうでしょう
それだけは駄目・・・」

「だけど…いつまでもこうしちゃ
いれないもの…でしょう?
あ、私が引き寄せるから、その隙に
母上はここを逃げ出せばいいわ」

「止めて頂戴、女人の貴女に何が
できると言うの?」

「女人だからできるのよ!任せて」

『・・・奥方様と変わらない
じゃじゃ馬がこの地にもいたか・・・』

テマンは苦笑いを浮かべ
すっと屋根裏から音もなく飛び降り
娘の口を騒がぬよう片手で塞ぎ
己の口に人差し指をあてていた。

「俺はチェ・ヨン様の私兵テマン
必ず助けにくる。だから無茶は
止めて大人しくしていてくれ」

こくこくと頷く娘を母親のもとへ
戻すと、娘の耳もとで小声で話した
言葉を繰り返していた。

「それではチェ・ヨン様も
このことはご存知なんですね」

「ああ…それで彼奴らの数は?」

「はい。三十名に近いと思います」

「奥方様お一人にか・・・敵も
是が非でも手に入れたい訳か・・
分かった。大人しくしていてくれ
・・・いいか?この屋敷に
踏みいったとき俺が子笛を吹く
それを合図に一頃に集まり
いつでも逃げ出せる用意をしていて
くれ。俺を信じろ・・」

みなが頷くと、テマンは安堵の顔を
浮かべ、するすると柱伝いに屋根裏
へと姿を消したのだった。

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