木春菊  [託す] 51 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「ふふふ…命の洗濯ってこの事よね
ヨンありがとう・・・。」

明日には国境に着くであろうと
今宵は宿に泊まり疲れを癒している
運が良かったのか、温泉を売り物に
している宿に泊まることが
できたのだが、かなりぼられた・・
名を明かせばそのようなことも
ないのであろうが・・・
ヨンはそれを拒んだ。

岩場で囲まれた外湯
下衣一枚で温泉に浸かる二人
テマンは、岩場の上で二人には背を
向け目を光らせていた。

「ん?・・兄上・・暗闇に・・・
あれは獣?」

「テマン、あれは・・猪であろうな」

ざぶっと湯からあがり
いまだ衰えを知らぬ肉体をおしげも
暗闇に晒し、獣を睨み付けるヨン

どきりとする。自分の頬の高揚が
分かるほどだ・・・幾年時が
流れようが変わらぬ思い・・
腰に巻かれた手拭いから張り出す臀部
・・・『もう~反則なんだから・・』

ぶくぶくと身体を温泉の中へと
滑り込ませ、眼だけを
ぱちぱちと瞬きを繰り返す。

不意にヨンが振り返る。

「ウンス…如何した!」

「・・・恥ずかしい・・・」

湯の中に腕を入れすぐにウンスを
引き上げる。

「溺れるであろう」

「だって・・・恥ずかしいじゃない
そんな逞しいお尻見せつけられたら
・・・」

「何をいまさら…すべて知り尽くして
おろうに・・クックッ」

「恥ずかしいもんは恥ずかしいのよ
それは幾つになっても変わらないわ」

「そんなものか?」

「恥じらいを無くしたら女じゃないん
だから…」

「兄上!!猪が突進してきます
逃げて下さい!」

野生の猪。まさしく
猪突猛進これに尽きるようである
岩場を気にも止めず駆け登り
こちらに向かってくる。
テマンが手首に隠す小刀を取りだし
構える。ヨンもまた岩場に寝せてある
鬼剣を鞘から抜き、ウンスを背に
庇い構えた・・・。

「ん?・・あの影は」

みなの視界に黒く浮き上がる影
ヨンの愛馬チュホンである。
野生の猪に向かい
前肢を高くあげ「ヒヒ~ン」と威嚇
する。

「危ない!チュホン!逃げて」

ウンスが思わずありったけの声を
ふりしぼり心配気に叫ぶ

「貴方お願い…あんな獣にぶつかれば
チュホンの脚が折れちゃう!
馬は脚が折れたら生きていけないのよ
馬体を支えられないの・・・
お願い止めて!」

「大事ない…チュホンは勝てぬ
戦はせぬ。見てみろ」

ウンスが暗闇に目を凝らせば
猪の脚が止まったようである
自身の何倍もある、馬の威嚇に
恐れをなしたか・・・ぴたりと
止まり…チュホンと睨み合いをしていた
いまいちどチュホンが威嚇すると
くるりと背を向け走り去る。

「行った?チュホン勝ったのよね」

「ああ…そのようだ・・・
されど…この場は早く去った方が
良さそうだな」

「ええ…戻ってきたら大変だから
宿に戻りましょう」

すぐさま二人は、湯からあがり
チュホンの手綱をテマンが引き
宿に戻る。


翌日の昼下がり国境にたどり着いた

「見て!ヨン!あの木よ
懐かしいわね~。小菊もほら・・」

辺り一面小菊が群生している
百年前に飛ばされた時
ウンスはこの小菊を植え
薬瓶を埋めた。大切な人に
メッセージを残す意味と
きっと生きてると信じて・・・

「もう…随分とご無沙汰して
しまったわね・・・」

一歩一歩二人は腕を絡め
あの時のように坂を降りていく
そして大樹の根本に、ヨンが腰を
おろし、その胡座の中に
ウンスを座らせる。

「こうしてここに腰をおろし
ウンスを待っておりました・・・
幾日も幾日も・・」

「そうね~。随分待たせてしまったわ
でも・・・こうして帰ってこれたわ
ソマンやヒヨンを授かり
大切な家族も増えたわ・・・みんな
ヨンのお陰よ。貴方に出会えたこと
感謝しているわ。」

「・・・感謝しておるのは
俺の方だ。王の剣であった俺が
貴方を恋い慕うようになり
倅を二人も与えてくれた。
迂達赤と言うかけがえのない仲間も
増えた。それもこれもすべて貴女の
お陰・・・」

懐に囲う愛しい人の肩に顎を
おき長年の想いを込めぎゅっと
抱き締める。

ふと目をやれば小菊が風に靡き
同じ方向へと揺れていた。
残り僅かであろう人生に幸多かれと
祈るように・・・。

「さあ…日がくれぬうちに
ヒョイアボジの墓参りをするとしょう
ウンスがこの地で世話になったんだ
俺も夫として頭を下げねばならぬ」

「そうね・・・」

二人は大樹にそっと手を触れ
頭を垂れ別れを告げる。
きっと生のあるうちに
この地を訪れるのはこれが最後で
あろうと、二人は知っている。

愛馬に跨がり半刻ほどゆるりと
進むと、サンギョンに教えてくれた
墓地が広がる。

「ここなのね…」

「ああ・・・間違いなかろう」

チュホンから降り
ヨンとウンスは目印である
小刀を刻んだ板を探す。
ヒョイアボジの遺言で、百年のち
きっとウンスが訪ねてくる
そう信じ目印を残していたのだ。

「ヨン…これは小刀だよね」

「そのようだ」

こんもり盛り上がった饅頭のような
土墓に手を添え二人は頭を垂れる

『ヒョイアボジ…ウンスよ
ユ・ウンス・・・覚えていてくれてる
やっと墓参りにこれました・・
あの時…ヒョイアボジにめぐり
会わなかったら・・・私どうなって
いたか分からないの・・・見ず知らず
の私を我が子のように接して
守ってくれてありがとう・・・
あ!アボジ?こう見えて私も
二人の息子がいるのよ・・そして
漸く役目を退き隠居したのよ
今日はねあの時話していた
旦那さんと一緒なの・・ふふふ』

あれやこれやと長いこと話していた
ウンスの瞼がゆっくりと開く・・。

「ゆっくり話せたわ・・・」

「ならばよい・・・俺も感謝を述べた
つもりでおる。あの折りうっすら
俺の目にも恩人の姿は見えていた
ウンスを、乳飲み子であったソマンを
助けてくれたのはヒョイアボジで
あろう」

「ええ・・そうね…助けてもらった
走れ---って聴こえたわ。」

ヨンはウンスの細腰を抱え
目元を緩めその顔を覗き込む。

『ああ…俺の存在を忘れてるか?
な~チュホンどう思う
でもな、俺達も二人のように
歳を取れるかな~。』

テマンがチュホン相手に
ぽつりと呟いていたのであった。


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