木春菊  [託す] 47 | シンイ二次小説でんべのブログ

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此度の倭寇討伐の軍が都に戻ったのは
七日ごのこと・・・
宣仁殿王様の御前にて
総大将である禁軍上護軍は自慢気に
口を開いていた。

「此度の戦…某が倭寇総大将の頚
もらい受けましてございます。
口ほどにもない奴等でございました」

「な・・・」

「ヒヨン!!」

片膝をついていたヒヨンが
異議を唱えんばかりに顔をあげたのを
ソマンは制した。
悔しそうに唇を一文字結び
ヒヨンは再び頭を垂れる。

「ほう~。上護軍が倭寇総大将の頚
もらい受けたとな?それはよき
働きをしたの・・・」

「はっ!勿体ないお言葉
恐悦至極に存じ上げます。」

「して、上護軍髷は如何したのだ
戦の最中不手際でもあったのか」

「いえ…これは倭寇兵士の刀が
髷を掠め、あまりに不恰好ゆえ
切り落としたまでのこと
無作法をお許しくださいませ」

だらりと垂れる髪を撫でながら
上護軍は曖昧に言葉を繋げていた。
尽かさず若き王様はだめ押しを
試みることにしたようである。

「上護軍…その方の髷を切り落とした
のはチェ・ヨン殿と言う者が
おるが…真義のほどはどちらじゃ
それとのぅ~その者が言うには
倭寇総大将の頚もらい受けたのも
チェ・ヨン殿であったと、余の前で
然りともうしておるが…」

「お、王様…お戯れはお止めくだされ
どちらの者がそのようなでたらめを
王様のお耳に入れたので
ございましょうか…禁軍には
おらぬはず・・・さすれば近衛で
ございましょう。某の武功を妬み
・・・」

「黙らぬか!」

新王の脇に摂政の名のもと控えていた
恭愍王が声をあげる。

「近衛は王を護衛する直属の部隊
その近衛を侮辱する者、即ち配下に
おさめる王を侮辱していると同じ
新王と余の目は節穴と思うてか!」

「そ、それは・・・」

「王様…わたしから真実を申し上げても
よろしゅうございましょうか」

「迂達赤隊長構わぬぞ。申してみよ」

「はっ!実は・・・」

ソマンは真実を伝えた。
父であるヨンに危ういところを
お助け頂いたこと、倭寇総大将の頚
もらい受けたのは父であること
父の名を出さず己の手柄にせよと
言われたことすべて伝える。

「よく真実を申してくれた
実はスリバンがいま口にしたことを
すべて見聞きしていたのだ。それに
相違ないと文に認められていた。」

「父上がわたしの手柄にせよと
申しておりましたが、それはできかね
ますゆえ・・・こうして
口を開きましてございます」

「それでこそ…余の民、余の一番の友
であるぞ、チェ・ソマン隊長・・」

「はっ!身に余るお言葉
恐悦至極に存じ上げ奉ります。」

「上護軍。どう申し開きを致す
つもりじゃ…その文には
こうも認められておったぞ
その髷を切り落としたのもチェ・ヨン
殿に相違ないとな・・陣の後方にて
ふんぞり反るだけの腑抜けな武将
それに渇を入れる意味で髷を
切り落としたそうだな・・・」

「・・王様!あの者はいち民に過ぎま
せぬ!その者が戦に紛れ込み
人を殺めたのでございます。どうぞ
あの者に正当な裁きをお願い
もうしあげます」

我慢の限界・・・
ソマンの中で何かが「ぷちんっ」と
切れた・・・。

「王様!わたしは!侮辱されようが
陰で笑われようが構いません!
ですが父上を侮辱されるのは
我慢がなりません!」

「・・余の一番の民となり
友となってくれたチェ・ヨン殿を侮辱
する言葉…余も許しがたい!
ソマン隊長案ずるでない座りなさい」

「・・・はっ!」

「長きに渡り国を余を護り通し
近衛をここまで鍛え上げた
御仁であるぞ。そのチェ・ヨン殿が
むげに人を殺める筈がなかろう
倅の窮地に助太刀致したまでのこと
みな~このことは不問に伏す
破れば・・・」

恭愍王は言葉を濁した・・・
裁きを言い渡す立場ではないからである

「申し渡す!禁軍上護軍その方
偽りを申した罪断じて許しがたい
よって身分を格下げにし
迂達赤入隊を命じる。ソマン隊長に
その心根しかと叩き直してもらうと
する。ソマン隊長よろしく頼むぞ
チェ・ヨン殿のことは不問と致す
異議はなかろう?」

「「「はっ!」」」

「はっ!お任せください」

小さく拳を握るヒヨンやハヌル
ヨンをいまでも慕う迂達赤は
嬉しそうであった。


先議が終わり、ソマンは恭愍王が
住まう殿へとひそかに呼ばれ
ある約束を無理やり交わされていた
異議は、一応唱えてみたものの・・・
ソマンはがっくり肩を落とし
兵舎へと戻ってきたのである。


「もう都へ着いてるころかしら」

「であろうな…気になるのか?」

「そうじゃないけど・・戦ばかりで
大変だなって思って…それに貴方が
また勝手に閨を飛び出すんじゃない
かって心配なだけよ」

「なんども言うておろう
此度は、江華島ゆえ赴いた
までのこと・・・二度と戦場には
立たぬ約束する」

「ほんと?武士の約束は命掛けなんで
しょう?破ったら追いかけて
行くんだからね」

「ウンスが戦場にか…それはならぬ
ゆえ…俺は約束は護る・・・嘘は
面倒ゆえつかぬ」

ウンスはヨンの胡座の中に
収まり眼下に広がる
雄大な山々向こうに沈む夕陽を
眺めていたのである。

「暑い・・・」

すでに六月の声をきき
蒸し暑い季節が訪れようとしていた。


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