木春菊  [託す] 44 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「俺は高麗近衛隊長チェ・ソマン
総大将の頚貰い受けに参った!
命がほしい者は邪魔をするな
歯向かう者は斬り捨てる!」

「あっはは。若造の癖に生意気な
・・・ん?・・チェ・ソマン?
おまえはあの鬼神と言われた
チェ・ヨンの倅か!」

「そうだ!嫡男チェ・ソマンだ。」

「鬼神がおらぬのだ!高麗軍恐るるに
足らず!みな!かかれ!」

「「「おお~~」」」

愛馬に跨がり口上を吐いてみたが
舐められたように倭寇が襲いかかる。
『俺もまだまだのようだな・・』
ソマンは愛馬から颯爽と飛び降り
あのとき父上から真新しく誂えて
頂いた剣を鞘から抜くと
丹田気を集めだした・・。
ゆらゆらと蒼白い気が身体全体を
覆うまであとわずかと言うとき
倭寇総大将の剣が一瞬の隙を突き
振り下ろされる。

「兄上~~~!」

ヒヨンの絶叫でソマンが瞼が
ゆっくり開いたときには・・・
『殺られる』
そう思ったに違いない。



一方王宮では・・・

「王様…あの禁軍上護軍
チェ・ヨン殿とずいぶんと考えが
違うようでして・・みなが無事か
無事倭寇を蹴散らして戻ってまいるか
わたしは案じております」

「ドチ、もう余は王ではないでのぅ
間違えてはならぬぞ」

「・・・わたしとしたことが・・
口癖は簡単には取れませぬゆえ
何卒御容赦下さいませ・・・。」

「ドチ・・・されど隠居を許したのは
余である。チェ・ヨン殿には
穏やかに暮らしてほしいと思うておる
あやつの一番は常に奥方である
ウンス殿…その愛おしい奥方と
仲睦まじく、残りわずかな人生を
送ってほしいのだ・・例えこの地が
どんな苦難の道をたどろうが
チェ・ヨン殿を呼び戻すつもりは
毛頭ない。それは決して変わっては
ならぬ余の思いじゃ」

「・・・王様・・・」

「妾が義姉様に成り代わり
御礼申し上げます・・・よくぞ
ご決断下さいました・・妾も同じ
思いにございます。あの折り
チェ・ヨン殿はこう申しておった筈
『某が最後にお仕えする王様は
恭愍王ただお一人にございますれば
その王様が王位を退く折…某の隠居を
お認め願いたく・・』と・・」

「そうじゃ…そう申しておった
はやくより決めていた素振りで
あったのぉ・・・じゃが余は
果報者じゃ…あのように信義にあつい
武人を臣下に持てたのじゃから
王にもそのような臣下が持てようか」

「ご案じ召されますな…近衛隊長
ソマン殿やヒヨン殿がおりますれば
必ずや信義にあつい臣下となりましょう
チェ・ヨン殿と義姉様の血筋で
ございます・・・裏切ることはないと
妾は信じております。」

「そうじゃな・・・余もあの二人を
信じよう・・ところで妃よ
この戦が終わり落ち着いたならば
ちいと遠出をせぬか?」

「まぁ~お顔がよからぬ事を考えて
おるような童のお顔をなされて
おります・・・うふふ
公主の嫁ぎ先を相談せねば・・」

妃である魯国大長公主はその悪戯な
顔を覗き込み口元を隠され
優雅に微笑まれていた。
それは国母で有らせられ折となんら
かわりなく、恭愍王はどきりと
心の臓の鼓動が激しく動くのを
押さえきれずにいるのだった。


諦めた・・・されど誰よりもはやく
その倭寇大将とソマンの間に割って
入ったのはヨンであった・・・。
蒼白い気がその大きな背から
ゆらゆら揺れていた。
鬼剣を手にソマンに振り下ろされた
剣を止めていたのだ。

「お主何者!」

「俺か?名など要らぬ。ただの通り
すがり・・・されど高麗軍に加勢致す
この地を突破されれば
愛おしいお方が悲しい思いをするゆえ
・・・ただそれだけのこと・・・」

「ぐっ~。その眼光の鋭さ
身体から発せられる凄まじい気迫
まさしく鬼!おまえは鬼神か--」

「この老いぼれがか?・・・
ふぅ~。ありがたいことだ」

「父上!!」

「ソマン!おまえは気を張り巡らせて
おらぬゆえ一瞬の隙を突かれるのだ。」

その背から語られる言葉は
やはり違う。百戦錬磨の強者と
語り継がれ、敵であろうが
その名を知らぬ者はおらぬと
言われるほど、恐れ震え上がらせた
チェ・ヨンその男である。

剣を弾き飛ばすとヨンは
その頚をすぱっと斬り落とした。

「ふぅ~~。ソマン勝鬨をあげよ
この大将の頚お前が斬り落とした・・
それでよい。
このことは誰にも口にしては
ならぬ。」

「ですが父上・・・」

「父は二度と戦場に脚を踏み入れる
ことはない。此度は江華島ゆえ
鉄原は目と鼻の先・・・母上が
恐怖におののき震える思いは
二度とさせとうないのだ。分かるな」

「父上~~。」

顔を見せず背で語っていたヨンの
そばにヒヨンが駆け寄る。

「ヒヨン。達者でおったのか?」

「はい。父上!母上は変わりなく
おられますか?」

「おお~変わりないぞ。寄り道し
帰りに寄ればよかろう」

「はい。是非!」

こうしてヨンは子らに背を向けた
ままその場をあとにする。
もう夜が明けようと
東の空がしらじらとしてきた。
急ぎ戻らねば、愛しいウンスが目を
覚ます頃であった。

ヨンは約束したように、これから数々
起きる戦場に姿を現すことは二度と
なかったのであった・・・。

一方鉄原の隠居先である屋敷にも
不穏な気配が迫っていた。
戦場から逃げのびた倭寇の残党で
ある。


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