木春菊  [偕老同穴] 119 | シンイ二次小説でんべのブログ

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その年の木枯らしが
吹き荒れる年の瀬
辺り一面、真っ白な冷たい織物を
敷き詰めるのではないかと思われる頃
ヨンとウンスは珍しく
二人揃って暇を賜っていた。

「王妃様の出産は大変だった・・」

山々が新緑で埋め尽くされる
頃、公主様がお生まれになったが
思いの外難産で苦労したのを
思いだしぽつりと呟いていた。

足から先にお生まれになったため
引っ込める訳にもいかず
根気よく何刻も費やし
少しづつ…時には針を打ち
待ったのであった。
当然のようにすぐに産声をあげる
こともなく徐々に紫色になる公主様。
その小さな身体に、ウンスは
蘇生処置をおこなったほどであった。
それでも産声をおあげにならない
公主様に、ウンスは最後の綱として
ヨンに弱い内功流して欲しいと
懇願したほどである。

そのかいあってかは分からないが
げほっと、羊水を吐き小さな身体は
赤みを帯、産声をあげたのである
ウンスの計算では、あと数十秒遅れて
いたら間に合わなかったと
ほっと胸を撫で下ろしたのであった。

王妃様のご出産のあと
アルがおのこを無事に生み
名をハウン。
ヘジンがおなごを無事に生み
名をジウ。と名付けたのである
トクマンもテマンも大層可愛がり
ウンスの世で言うイクメンぶりを
発揮していた。
ヘジンは武閣氏を退いていたため
赤子を育てるのに差し障りは
なかったが、アルは役目があり
乳離れした頃、屋敷に通う使用人が
都合が悪い時トクマンが背負い
仲間にからかられながら
役目についたほどであった
生後半年が過ぎともに健やかに
育っているようである。

「如何した?」

「え?公主様の出産を思い出して
いたのよ。あのときは本当に
ありがとう…貴方の助けがなかったら
私は今頃、口煩い重臣のおじ様方に
責められ、流刑かなんかに罰せられて
いたかも知れないわ。」

「俺がそのような事をさせる訳が
なかろう。ウンスと離れるなど
あり得ぬ」

「ええ…こんなかわいい二人を残して
一人流刑は絶対嫌よ」

ふと居間へ続く廊下に目をやれば
オンドルの利いた床の上を
ヒヨンが四つん這いになり前に
進んでいる。
そんなヒヨンを跨ぐ形でソマンが
懸命に教えているのである…

「ヒヨンちがう!こうするの!
あにさまは、こうしてうでや
あしをきたえていたの!」

「え?・・・。」

ヨンとウンスは顔を見合せ
ソマンの言葉に我が耳を疑う。

ソマンはそう言うと
ヒヨンの隣にうつぶせになると
匍匐前進をして見せている。
ヒヨンも負けじと、肘を前へ前へと
だしソマンのあとを追うが
すぐに挫折すると尻をつき
「ばぶっっ」と口を尖らすのである
「はあ…」と短いため息を吐くと
がっくり項垂れるソマン。

「ソマン?おいで」

「なあに?」

年が明ければ二月(ふたつき)
ほどで四歳になるソマン
幼子には変わらないがすっかり
兄様ぶりがいたについてきていた。

居間で茶を啜るウンスと書を読む
ヨンのもとへと近寄る。

「ソマン。覚えているの?
ヒヨンくらいの時のこと」

「おぼえてるよ。おいていかないで
ってかかのあとをおってにわを
こうしていたのを」

身振り手振りでソマンは
匍匐前進の真似をして見せた。

「ヒヨン。まだまだだね・・」

「もう~なんだかソマンすごい
胸張って達人になったみたいよ
・・ふふふ」

「ソマン!内功の鍛練をせぬか?
今日は父もたっぷり費やせるゆえ
とことん付き合うぞ」

「いく。ちがうな・・やるっ!
たんれんしなぬていどよ」

「あっははは・・・それも覚えてるの
記憶力半端ないわね…あ~参った」

「屋敷ではできぬ。ウンス
ソマンに着込ませてくれ
庭で致すゆえ」

「はぁい。風邪引かせないでよ
ソマン。おいで完全防備よ」

できあがったソマンの姿は
帽子、手袋、マフラーとすべて
イルムとサンミが、一針一針
丹精込めた代物である。
毛糸など手に入る訳もなく
端切れを合わせ中には
古布を詰め込み風を通さぬよう
しっかりとした出来映えであった。

「ふっ…ソマン転んだ方が早いのでは
ないか。まあ~よい、参るぞ!」

「はぁ~い。」

中庭へと飛び出したヨンとソマン

「ソマン。丹田は教えたな
覚えておるか?」

「うん!へそのした!」

「そうだ。丹田にソマンの気を集めよ
邪念を振り払い気を集中させてみよ」

「はい!」っと元気な声がすると
雪の上に腰をおろし結跏趺座を
しようと試みるが…まだ無理なようで
ぺたんと尻をつき瞼をおろす。

その横でヨンも結跏趺座を組む。

「ふふふ…ヒヨン?邪魔しないで
静かにしていようね・・父と兄様は
鍛練中だから・・」

ウンスの膝の上で瞼をおろすヒヨン
眠っているのだろうとウンスは
思い、居間からそっと
二人を眺めていたのである。

ソマンの気が高まり
それを肌で感じるヨン…だが・・
ふと居間に目を向ければ
ヒヨンの身体から発っせられる
気を感じる。「・・・!」

「ふぅ~~・・・とと?
ヒヨン…すごい・・もうソマンでも
わかる!」

「そうか。ソマンも感じたか?
されど…まだ生まれて九ヶ月の幼子ゆえ
鍛練はできぬな・・・」

「うん!すこしづつソマンおしえる
たのしみ~。とと?けんのたんれん
したい、ヒヨンとかかにみせる~。」

「ふぅ…剣は人に見せるためするのでは
ない。大事な人を護るために
使うのだ。ソマンが大事な人と
思うのは誰なのだ?」

「かか!いちばん。ヒヨン!にばん
ととと、おばばといるむとちょんすは
つよいからソマンが
いなくてもだいじょうぶ・・
だから…さんみ、さんばん
えぎょんよんばん!!」

「ふっ…そうかならば
ソマンが大事と思う人を護るために
剣を振るう。それを忘れるでない
ソマンの剣を持って参れ」

「はい!!」

縁側から履き物を放り投げ
どたどたとあがり
遊具篭の中から剣を取りだし
ヒヨンの頭をよしよしと撫でると
ウンスに嬉しそうに微笑みかけ
中庭へと降り立つ。

その間ヨンも納屋から木刀を
取りだし、ソマンを待っていた。

「ソマン。いつでもよいぞ」

「はい!えいっ!」

小さな身体で、雪に脚を取られながら
ソマンは父であるヨン目掛けて
遊具の剣を振りかざす。

その場から動くことなく
ソマンの剣を払い除けるヨン

「取って参れ・・。」

「はい!!」

『ちょっとは手加減してあげても
良いのに・・・』

雪の中を懸命に剣を取りに走る
ソマンを目で追いウンスは胸のうちで
そう思う。そんなウンスの思いを
知ってか知らずかソマンは
剣を拾い戻ってくる。

「気を集中させよ。父は
ソマンの大事な母やヒヨンに手を出す
悪と思え。さすればソマンは
如何する?」

「まもる!!ぜったい!」

「それでよい。その思いを忘れては
ならぬぞ…まいれ!」

「はい!」

ソマンの背丈からすれば当たり前では
あるが、ソマンが剣を振りかざし
まかり間違い命中するのであれば
ヨンの脚をである。
長い脚目掛けてソマンは剣を
振り下ろす。

「かんっ!」と鈍い音をさせ木刀が
交わると、ソマンはにやりと悪戯な
笑みを浮かべ片手を離し
ヨンの太ももを擽る…

『しまった。ソマンは両手が使える
のだ・・・』

器用に気を分担し
右手は剣に左手は太ももにと
ソマンはもぞもぞと左手を動かす。

「クックッ…こら!ソマン止めぬか
それは卑怯であろう…クックッ」

「とと…だいじなかかとヒヨン
まもる。どんなてをつかっても!
ととのまけ~~」

「こら!悪戯坊主!止めよ。止めぬか
クックッ・・あっははは」

珍しく笑い声をあげ
木刀を放り投げソマンを小脇に
抱えるヨン。
そのまま屋敷の中へと戻って行き
ソマンの雪を払い自身も雪を
払うと居間へと向かう。

「ウンス。ソマンは卑怯な手を使う
ものよ。」

「あら…そうかしら?立派な策士
だと思うわ。ソマンはもっと大人に
なれば何をするの?」

「ソマン!さくし!とととおなじ
けんのみちにいく!
ずっとまえからきめていたの」

「・・・」

うれしくもあり、そんな道は進んで
欲しくもないウンスは複雑な
面持ちでソマンを抱き締めるだけで
あった・・・。



ひとつ前のお知らせは15日午前8時を
もって締め切らせて頂き
下書きに落とします。
よろしければご参加下さいませ。

番外編と言いますか・・
記事の118と119の幕間の出来事に
なるのかなと・・・

ポチっとして下されば嬉しいです




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