木春菊  [偕老同穴] 証 101 | シンイ二次小説でんべのブログ

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恩赦が布告され一月(ひとつき)が
過ぎた頃、流刑に処された者が数人
都へと戻ってきた
降り積もる雪が、行く手を遮り
幾分月日が掛かった様子だった


「父上…」

その日の役目を終えた
イム侍医は、久方ぶりに父と対面し
ジオンの窶(やつ)れ具合に、心を痛める
狭い長屋住まいのイム侍医
独り身の為、典医寺住み込みの
形を取っていたが、恩赦で父親が戻れる
と聴いてから急遽用意した長屋である

「護衛の人に聞いていた。長屋を借りて
くれたらしいな、迷惑掛けるが
宜しく頼む・・」

「父上…真、心根を入れ替えて
下さいましたか、女人の尻を追うなど
もうお止め下さいますな?」

「もう…懲り懲り・・・」

そうぽつりと、溢すと敷かれた床に
ごろりと背を向け寝入ってしまう

「父上・・・話がまだ終わってません」

「・・・ヒよ、私は罪を犯したのか
何故離島へ赴いたんだ、女人が病だと
王命が下り…確かに女人は、二人いたが
皆罪人であった!流刑に処されたのだ
罪人の治療が終われば戻れると
思っていたが…なかなか戻れず・・
いまに至る・・・」

ジオンはくるりと向き直り
胡座をかき、悔しそうに唇を噛みしめ
呟いている

「父上…私がお願いしたんです
あのままでは、父上は医仙殿を
我が物にしようと、躍起になって
おられた。大護軍殿は、決して
そのようなことは、お許しになるお方で
ございません…今頃は、私共々この世
には、生存していなかったかも
知れません…それがお分かりでしょうか」

「どうして言い切れる!医仙殿が
この父に、靡いたかもしれないでは
ないのか?」

「父上・・・まだそのように
思われていらっしゃるのでしょうか
あり得ない話です!あれからふたりには
幾度となく災難が降り掛かりましたが
ともに力を合わせ、乗り越えて
来られました…それを目の当たりに
してきたのです。何故お分かりに
なろうとなさらないのです」


「その通りである…邪魔をするぞ」

「大、大護軍殿・・・」

ヨンが、何の前触れもなく突然現れ
二人は肝をひやす
人の気配に目敏いイム侍医だったが
ヨンが気配を消していたため
気づくことはなかったのだ

「呼んで下されば、出向きましたものを
むさ苦しいところですので・・・」

「構わぬ、ジオン殿…医仙に限らず
今後、女人絡みで騒動を起こせば
そなただけの問題ではすまぬ故
その所を、然りと心得る事
忘れてはならぬ…イム侍医の王子様
ご誕生の貢献が高いゆえ、父である
そなたに恩赦がおりたのだ
そうでなければ、都には生涯戻ることは
叶わぬ筈…」

「・・・そうおっしゃられましても
騙し討ちではございませんか
私めは、罪を犯しましたでございますか
何もしてはおりません!!」

「馬鹿者が!!」

ヨンは、眉をぴくりとあげると長屋中に
響き渡る声を張り上げる。
「なんだなんだ」と隣の住人が
鎌を手に持ち飛び出してくる始末

テマンが訳を話しそれを止める

「その方、倅の心根が分からぬか
女人を孕(はら)ませ捨てる!男子(だんじ
)にあるまじき行い!いつかは恨みを
かい、闇討ちにあうのではないかと
大層案じていた倅の事を、その方は
考えた事があるか?聞けば兄弟は
おるが皆、母が違うと…故に疎遠に
なっておると・・・」

「・・・父上…侍医の職を負われた訳を
どう思われます?…女官の尻を追いかけ
不貞を働いたのです…女官とは王様に
生涯を捧げた身ではありませぬか
言わば王様の女人に手を出したのです
死罪になってもおかしくはなかった
それを逃(のが)れられたは、侍医として
は、真面目に勤めあげた実績が
あったからです…お頼みします
考えを改めて頂きたい…」

イム侍医はうっすらと瞳を滲ませ
唇を噛みしめ、父ジオンを見つめる

当初は恨みもしたであろう
己を身籠りあっさりごみのように
捨てられた母を思えば尚更だ
だが…肉親の情には勝てぬ様子であり
それがもどかしく思えるのだ


「一つ付け加えておく…医仙即ち某の奥
は、翌月は産み月を迎える大事な
身体…万が一にも、手出ししよう
ものならば、その命で償ってもらう
それは忘れてはならぬ」

「産み月と?・・・どうでしょう
私がとりあげましょう
そこら辺のお産婆とは腕が違います」

「断る!!そなたに取り上げて貰う
謂れはござらぬ!」

この場に及んでも
己のことしか考えぬジオン。
ヨンの辛抱も限界が近づいてくる
ジオンを睨み付けるその形相は
まさしく鬼!
全身が蒼白く輝きますと、指の先から
制御しきれない雷功が、暴れ出る

ヨンの怒りを、目の当たりにするジオン
よつんばに這いながら、部屋の隅へと
逃げ、膝を抱え小刻みに震えていた

「大護軍…どうぞお許しを
あのような無様なありさまであっても
父上に変わりはなく…私から
幾重にもお詫び申し上げます」

イム侍医は、床に額を擦り付け
その肩が震えていた
そんな姿の侍医を見るに忍びなく
全身を覆っていた
蒼白く揺らめく怒りは
ふっと消え失せていた

「侍医…顔をあげよ…そなたが何ゆえ
詫びねばならぬ…先ほど恩赦を賜った
者らは、王様に拝謁を終え誓って
いたのだ、二度と間違いは起こさぬと
だが…悲しいかなジオン殿は
倅である、そなたの心根を分かろうとも
せず、言いたい放題まったくなっては
おらぬ。」

「・・・・」

「ジオン殿…身を粉にし勤める事を
薦める。少しは倅の有り難みも
分かろう」

「大護軍…父上に、働き口が
ありましょうか?既に五十を越えて
おりますが・・・」

「本人のやる気次第ではないか?
幸いな事に、ここは都故その気になれば
何でもあると思うが」

「分かりました、探して見ます
大護軍、お役目の帰りでは?
医仙様が、馬車でお待ちでは
ありませぬか…早ようお戻りを
風邪をひかせてしまいます」

「ああ…そうする。侍医何かあれば
相談に乗る。いつでも兵舎に
訪ねて参るがよい」

「はい…ありがとうございます」



ヨンは、イム侍医に見送られ
ウンスが待つ馬車へと
踵を返したのだった





※※※※※※※
「女官とは王様に
生涯を捧げた身ではありませぬか」

イム侍医が吐いた一説ですが

朝鮮王朝時代では、こうだったと
とらえドラマを見ていましたが
高麗では当てはまりませんか?
私の間違ったとらえかたでしたら
すみません。

うまくリンクが張れません
偕老同穴34前後で、ジオンが何故
流刑になったか描いています
宜しければそちらをお読み頂ければ
多分繋がる筈です。

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