木春菊  [偕老同穴] 証 94 | シンイ二次小説でんべのブログ

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チェ尚宮は一人、ウンスと共に訪れた
市中の産所を度々訪れていた。
何事にも動じないチェ尚宮だったが
お産は始めてのこと…ウンスの教えを
頭に叩き込んではいたが…今日は
一人どれだけやれるか、実際に赤子を
取り上げたいと、スリバンを通して
頼み込んでいたのだ

季節はめぐり冬将軍の足音がそこまで
聞こえている

王妃様の出産もあと一月(ひとつき)
を切っている

『王妃様はよいのだ…ウンスがおる
いざとなれば、護産庁(ホサンチョン)が
ある。難題はウンスだ…甥の大事な嫁御
ウンスに間違いなど、万が一でも
起これば、あやつも生きてはいまい』

チェ尚宮は、胸の内のもやもやと
不安を払拭するように、頭を左右に
軽く振る。
そしてきりりと前を向く。

「いいかい、お産は理屈じゃないんだ
ぽんと力んで、生まれるややもいれば
何刻も生まれないややもいる
こっちの経験がものを言うのさ
さあ…次のお産から手を貸しておくれ」

「・・・・」

「返事はどうしたんだい!暇潰しなら
帰って貰って構わないさ」

「ああ・・・」


チェ尚宮は腰をあげ、産婆のあとを
ついて行く

「この母さんは、一昼夜苦しんで
いるんだ…あんたならどうする?」

「身体を温める、そして産道を開き
やすいようにする・・・」

「間隔がまだ長いならそれもあたって
いるんだけど…この母さんは七日ほど
前の筈が、いまだに生まれないんだ
漸く陣痛がきたんだけど子宮口が
開かないんだ…」

『そうか、嫁御が言っていた
風船とやらはなかなか生まれない
母親の子宮口を開くために使うのだな』



一刻ほどのち、無事におなごが産まれ
目の当たりにしていた、チェ尚宮も
安堵の表情を浮かべる。

「ちと頼みたいことがあるのだが…」

「なんだい?」

「先日共に参った女人を覚えておろう?
・・・医仙と聞いておるか」

「は?医仙様…天界から来たと言う?
名はもちろん知ってはいるさ
けど…ご尊顔は拝んだことないから
知らなかったよ・・は!医仙様なら
大護軍様の正室様だろう?」

「まあ…そうなんだが、それでじゃ
医仙が、翌年の二月頃生まれるのだが
そなたに助太刀を頼みたいのじゃ
私ひとりではちと不安でのぉ・・・」

「・・・分かったよ…無事に取り上げて
やるさ、いつでも使いを寄越せばいい
飛んで行ってやるから」


チェ尚宮は確約を取り付け、胸を撫で
下ろし産所をあとにする



一方屋敷では

庭の木々に雪囲いに精をだすチョンス
ずいぶん前、嵐の夜骨折した脚を
庇いながら…

寒くなると骨折後が疼くようだ
チョンスとエギョンは暇を頂きたいと
あの時、申し出ていたが
ヨンとウンスが、それを許さなかった

チョンスは、まともに動かない脚では
奥方様をお守り出来ない為
己らが退けば、新たな使用人を雇える
と考えての申し出であったが…

「ふふふ…チェ家の使用人は一生涯
二人だけよ…サンミもイルムもいずれ
嫁に出るかも知れないじゃない?
歳をとり動けなくなっても、ここに
居てちょうだい」

そんな嬉しい言葉を掛けてもらい
二人は留まることに決めた

「あんた…脚が痛むのかい?」

「少しな…奥方様は半年もすれば
元に戻り、普通に暮らせると
言って下さった…脚を動かし
少しずつ、りはびりとかなんとか
言っていたから、それをしているのさ」

「そうかい…無理をしないでおくれよ」

庭の木々の数は多くはないが
筵を巻き付け、紐で縛る力仕事だ
小さい雪虫が飛んでいる
辺り一面深い雪に覆われる日も近い




「ただいま」

近頃は、馬車での出仕が多くなる
テマンが御者を務め、ウンスは
相変わらずヨンの膝の上、抱きしめられ
ての往復となっていた

「わ~雪囲いが終わってる
まさかチョンス一人で終わらせたの?」

「お帰りなさいませ、旦那様、奥方様
はい…たったいま終わりまして…」

二人が屋敷に戻る夕刻には、辺りは
既に暗闇に包まれていたが
蝋燭の灯りを頼りに、チョンスは
精を出していたのだろう
庭には、数本の蝋燭が揺れ
暗闇に慣れないウンスでも、すぐに
目に飛び込んできたのだ

「ご苦労様…痛むだろうけどリハビリの
つもりで頑張って…でも無理は禁物よ」

「今の言葉…どこぞの奥方に聞かせて
やってはくれぬか」

「ええ、・・・どこの奥方へ聞かせて
やるの?・・え?私---」

ヨンの問いかけに、振り返り
何気なく答えていたウンス
その頬を突っつかれ、始めて自身と
理解したのか、素っ頓狂な声が
暗闇の屋敷に木霊していた…


※※※※※

皆様こんにちは
いつもお寄り下さり誠に
ありがとうございます


護産庁(ホサンチョン)ですが
(王妃様の出産を受け持つ部署)

高麗時代もあったと思いますが
見つけられず、朝鮮王朝時代
イ・サンからその部署をお借りして
来ました。
皆様の広い心でお読み下されば幸いです


でんべ






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