木春菊  [偕老同穴] 証 90 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「叔母様…今日は実際のお産を立ち会い
ませんか、市井に腕の立つ
お産婆さんがいますから、そちらに
出向きたいと思いますが、王妃様?
叔母様をお借りしても構いませんか」

「構わぬ…然と学んで参れ
チェ尚宮が、義姉様の手助けをせねば
のぅ…妾もあと二月(ふたつき)程で
あろう?義姉様…」

「ええ…そうです、あっと言う間に
過ぎてしまいますから…合間を見計らい
学んではきたのですが、やはり肌で
実感された方が、覚えが早いですから」

王妃様は、すでに八ヶ月を少し過ぎた
お腹も妊婦と分かる程ふっくらされ
今のところは、順調そのものであるが
ウンスは、書物に記されていた王妃様の
悲しすぎる最期を知っている…
だが、自身がこの地に留まることで
歴史は変わったと強く信じ
可能な限り手を尽くそうと決意していた

先ずは、出血多量・・十分考えられる
この地の医療では、これが最大の難関
命取りに繋がる・・・
最悪帝王切開も視野に入れておかないと

ウンスは坤成殿を後にし、叔母の訪問を
典医寺で待つ最中いろいろと、考え
頭をぐしゃぐしゃにし、卓に伏せている



「待たせたな…参ろうかの」

「あ、はい叔母様…」

「なんじゃ…髪がぐしゃぐしゃでは
ないか!まったく幼子か…」

叔母は、そう言うと懐から櫛を取りだし
ウンスの髪を丁寧に梳(す)く

「・・あの人以外初めてです
とっても心地いいです…叔母様」

「そうか…私は子がおらぬ故、人の髪を
梳くなどしたことはないのだが…
たまにはよいものじゃの
ここが温かくなりよるわ…」

叔母は、自身の胸を押さえ
しんみり呟く

「いかんのぅ…年を取ると愚痴が
おおなるようじゃ」

「ふふふ…まだまだこれからですよ
孫も抱いてもらわなきゃ」

「・・・孫か?…」

「はい…孫です」

叔母は照れたように、「ゴホンッ」と
咳払いを一つ落とすと、嬉しそうに
口の端をあげる。

護衛のミント、アル、少し離れて
テマンのともに引き連れ市井へと向かう



「医仙様、トギさんが言っていた産所は
こちらになります」

「ありがとうミント、私も聞いて
いたけど、方向音痴だからさっぱり
わからないのよ…助かるわ
叔母様こちらのようですよ」

トギに、繋ぎはつけてもらっていた為
すんなり脚を踏み入れる事が出来た

「お邪魔します…今日はよろしく
お願いしますね」

「・・・忙しいんだ、挨拶交わしてる
暇はないんだ…すまないね」

「お構いなく…見学させてもらうだけ
ですから」

産所には、二人の母親が今まさに
新しい命を授かろうと、苦しいうめき声
をあげている

「叔母様、あちらのお母様が
もうじき生まれそうです
お邪魔にならないように、もっとそばで
見学させて頂きましょうか?」

「・・・ああ・・」



「うっっ」と痛みに耐え、額には脂汗が
すでに滴となって滴り落ちていた

「頭が見えてきたよ!もう一息だ!」

端で見ている、ウンスと叔母も手に 
汗握り見つめている

「ぐっっっ---はぁはぁ・・・」

どうやら生まれたようだが
産声が聞こえない
お産婆は、すぐに赤子の脚を持ち
逆さにすると、赤子の尻をぽんと
叩き、羊水を吐かせる

「おぎゃぁ~おぎゃぁ」と元気な産声が
産所に響き渡りウンスと叔母も
安堵の表情を浮かべる

「ウンスから学んでおっても
お産を目の当たりにすると、引き締まる
思いがするものだな…」

「はい、叔母様…今のように産声を
あげない赤子もいますから
一瞬たりとも気を抜けません」

「相分かった…然と心得たぞ
ウンスのお産は、この私がつとめる」

「お願いしますね…ふふふ」

もう一人の母親は、まだ陣痛の間隔が
長いため、すぐには生まれないだろうと
丁寧に挨拶を交わし、ウンスと叔母は
産所をあとにする


二人が外に出ると…
柱に凭れ腕を組みヨンがこちらを
見つめている

「ヨン!どうしたの?まだ昼回った
ばかりよ」

ヨンは、つかつかと歩みより
ウンスのそばまで寄る

「産所に行くとは、聞いてはおったが
無理をしておらぬか、ちと気になり…」

「戯け!役目を放り出してきたのでは
あるまいな!」

「・・・」

「チュンソクさんに、丸投げしてきたの
?」

「・・・」

「バシッ」っと叔母の平手が
ヨンの後頭部に炸裂する

「叔母上…往来で叩くことはなかろう」

「馬鹿者が…誰も見ておらぬわ!」

ヨンが後頭部を擦り
ウンスはあたりを見回すが
確かに、珍しく数える程しか
人通りがないのだ

「え?どうして?」

ウンスがヨンに問い掛けると
顎をしゃくりあげ、空をさしている様に
ウンスには見える

着いた時には、真っ青な青空だったが
灰色の分厚い曇に覆われ出していた

「そうか嵐で人通りも疎らと言う訳ね」

「そのようです、早く戻らねば
雨に打たれてしまう…ウンスのことだ
叔母上と二人、市中を散策したいと
言いかねん故…迎えに参った」

それから三人は急ぎ王宮へと
戻って行くのであった



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