木春菊  [偕老同穴] 証30 | シンイ二次小説でんべのブログ

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出立の早朝
まだ世も明けぬ頃、徳興君が隠し牢より
チュンソク、トクマン他迂達赤の
手により連れ出される

その姿は、長かった髪は抜け落ち
片目は光を失い、顔の皮膚は爛れ
(ただれ) 徳成府院君が生存していた折
我が物顔で王宮を闊歩していた
面影と威勢はまったく感じ取れない

だが…虚栄はる口だけはよく回るようだ

「貴様ら、某は王族ぞ、無礼であろう
縄を解かぬか!!某をどこへ連れて
行くつもりなのだ」

「御案じめさるな、お戻り頂くだけに
ございます」

チュンソクがぽつりと呟く

「お--漸く某に、手を出すと
どうなるかが分かったようだな
あのお方が、俺を返さねば総攻撃を
仕掛けるとでも言ってきたのであろう
尻尾を撒いたか、哀れな王よ」

「叔父上、何を言っておる!余が
尻尾を撒いたと聞こえたが?」

そう…この隠し牢は、王様の寝所の
隣にあったのだ、迂達赤により
何重にも警護され、ここまでたどり着く
間者、刺客もそうそうおらぬと
大護軍チェ・ヨンの発案から生まれた
隠し牢なのだ

「護軍!猿轡を噛ませるがよい
こやつの声が漏れてはならぬ故
彼の地に着くまで、道中外してはならぬ
よいな!」

「はっ!」

「叔父上、今生の別れでござる
黄泉の国に無事にたどり着いたなら
己が犯した
罪の重さを思い知るがよい!」

「今生の別れ?・・ぐぅっぐぅっ」

トクマンは、チュンソクの合図を
受けると、話を遮るように猿轡を
噛ませた。そして引き摺られながら
遠ざかる徳興君の後ろ姿を見つめ…

徳成府院君に担ぎ上げられ
叔父上も不運…されど毒を武器に
この国を手に入れようとした咎
余と王妃の第一子を殺めた咎
医仙殿に、二度までも毒を盛り
恋い慕う二人を長きに渡り
疎遠に追い込みし非道
どれひとつとっても余は忘れぬ

王様はそう思うと、きりりと前を向き
その背が見えなくるまで、見送っていた


王宮の裏門に着くと…

「トクマン…素早く牢車にお乗せしろ
誰に見られるとも限らん、ましてや
決して奥方の目に触れされてならぬ故」

「ぐぅっぐぅっ」と何度もうめき声を
あげ抵抗を見せているが、トクマンが
顔をしかめながら、徳興君の尻を蹴り
牢車に放り込む

牢車は黒い幕が張られ、中の様子を
伺い知ることは、一切出来きぬよう
目隠しがされていた


「後は大護軍と奥方様の到着を
待つのみ、世が明け切らぬうちに
市中を抜けなければならぬ
気を引き締めてかかれ!」

「はっ」




「まあ~ハンモックかしら
違うかな…ブランコかな~でも
これで長旅も揺れずにすみそうよ
ありがとう、チョンス」

ウンスは輿を中を覗き見、歓喜の声を
あげる

輿の内装は、床の椅子は
取り除かれふかふかの布団が敷き詰め
られている
その僅か上斜めに、布が張られている


「奥方様、道中はこの布に座られ
足も伸ばせるように出来ています
俺の重さでも、十分持ちこたえて
くれましたから、奥方様でしたら
大丈夫でございます」

「これ、誰が考えたの?
とっても良くできているわ」

「イルムとサンミが教えてくれました」

「へへっ…おら達ちっちぇ頃
父ちゃんが、おっきい木の下に
作ってけで(くれて)よく遊んだだ
今はおがって(大きく)しまったから
あそばねえけど…」

「ふふふ…そうだったんだ
お土産買ってくるから待ってね」

二人は澄んだ瞳を輝かせ
こくこくと頷く


「エギョン、すまないが屋敷の事を
頼む…スリバンの見張りが、もう既に
潜んでおるようだが、十分気を付けよ
サンミとイルムも頼むぞ」

「はい、旦那様屋敷の事は
お気になさらず、奥方様をどうぞ
お守り下さいませ」


ヨンがウンスに手を貸し
ハンモックに腰を下ろさせる

「よく出来ておる、天界にも
このような物はあるのか?」

「ええ、あるわよ…こうして足を
伸ばし眠ることもできるのよ…」

「ウンスの楽な体勢で使うがよい
赤子に、負担が掛からぬよう頼む」

「はい、旦那様…ふふふ」

ヨンは目元を緩めウンスの頬を
そっと触れると「では行って参る」
と、使用人に声を掛ける


御者はチョンスが勤め
ヨンとテマンが馬に跨がると
王宮目指して出立したのである




らくちんだわ…ふふふ
でも眠ってしまいそう・・・
赤ちゃん…あなたのお父さんが
心配性で、お母さんも一緒に行くこと
になったの…あなたもちゃんとついて
来てね


ウンスは、優しくお腹に手をあて
胸のうちで語りかけると、いつの間にか
瞼が閉じ深い眠りに導かれたのである



輿が止まり、王宮の裏門に
たどり着いた

そこにはチュンソク、トクマン始め
数名の迂達赤、武閣氏のミントとアル
トギとポン、王様まで顔を揃えていた

「王様、お出ましにならずとも」

ヨンは、そう呟くとチュホンから
飛び降り、王様の御前にて片膝を付き
頭を垂れる

「よいのだ大護軍、顔を上げよ
此度の事、然りと頼んだぞ
もう一つ、イ殿の詮議はその方らが
戻り次第、行うことにする故
吉報を待っておるぞ」

「はっ!、必ずや手筈通りに
やり遂げてご覧にいれますれば
お任せ下され…」



王様がお戻りになると
ヨンは、皆を見回すと声を出さず
力強く頷くと、皆も頷ぎ返す

大人しいウンスの様子が気になり
静かに輿の扉を開けると
そこには、ハンモックの上で
すやすや眠る、ウンスの愛らしい寝顔が
飛び込んでくる

まったく…こちらの気も知らず・・・

ヨンは目元を緩めながら
見入っていたが、顔を引き締めると
静かに扉を締め、チュホンに跨がる

トギとポンは、他の迂達赤に
それぞれ相乗りし
ミント、アルは自身の馬に跨がり
チュンソクとトクマンは牢車の両脇を
固め、その後ろに 迂達赤が並ぶ
ウンスが乗る輿の前方をテマン
後方はミントとアルが守り
もちろん輿の横は、ヨンがしっかりと
寄り添う


こうして彼の地目指して
出立したのであった


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