木春菊  [偕老同穴] 証 17 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「・・・派手にやらかしたのね…」

「ウンス…どうしてここに?」

「お土産を渡そうと思って向かってたら
トクマン君にばったり会ったの
貴方が、新兵をこてんぱに
打ちのめしてる聞いたから、急いで
来てみたら、この有り様よね…」

ウンスが駆けつけると
ハヌルを始めとする新兵二十人程
練兵場の土の上で、踞っている
勿論ヨンの息は、乱れてはいなかったが


「訳はトクマン君から聞いたわ、先ずは
・・・あ!トギもポンさんも
来てくれたの?
ほとんど打ち身だから、とりあえず
医員の方と手分けして、お薬貼って
あげて頂戴、私はトクマン君のこぶを
見るから…」

「こぶなど怪我のうちに入らぬ」

そう呟くヨンに向かい、腕を組み
医員の立場としてヨンに説く


「確かにそうね、でも脳震盪起こして
いたら大変よ、一時的に記憶なったり
するんだから、むやみに頭だけは
叩かない事ね」

「・・・」

「それと、新兵さん方、人を鼻で
笑うってどう言う事!トクマン君はね
いくつもの戦場を潜り抜け
今はこうしているのよ!私は人を見下す
そんな人は嫌いよ!」

ウンスはくるりと新兵に向き直り
険しい顔つきで捲し立てる

「・・・ウンス、もう良い!」

ヨンはそう言うとウンスの手を取り
私室へと向かう


「医仙様、たいそうな剣幕だったな…」

「ああ、確かに…でも俺達怒鳴られる
事したのか?」

「分からないが、逆鱗に触れたのは
確かだな…」

新兵はそんな事を口々にし、二人の
後ろ姿を眺め見送る



「ヨンってば…脚の長さが
違うんだから、もう少しゆっくり
歩いてよ」

「ウンス…」

ヨンは一言呟くと、ひょいとウンスを
横抱きにし、兵舎の中を闊歩する
私室の扉を蹴りあげると、テマンを
見張りに付け内側から鍵を掛ける

「え?もしかして怒ったの…?」

「・・・」

「なんでそんなに怖い顔しているの」

「・・・トクマンの脳震盪とやらは
どうなのだ」

「え?吐いたり目眩を
起こさなければ、こぶで終わる筈よ」

一歩一歩壁まで追い詰められるウンス

「ねぇ、でしゃばり過ぎた事は
ごめんなさい…貴方の体面を傷付けて
しまったのね・・」

「俺の体面などどうでもよい」

「なら、なんでそんなに怖い顔するの
ちゃんと言ってよ…」

「言わねば分からぬか?」

瞳を滲ませこくこくと頷くウンス

「・・貴女を誰の目にも晒したくない
俺の我が儘と分かっておる・・だが
どうにも堪えられぬのだ…怒る姿さえ
俺だけに見せればよい」

「・・・ヨン・・嫉妬してくれたの」

「・・・嫉妬とは…悋気のことか?」

「そう…」

「・・・ウンスの事となると、俺は
不甲斐ない男になる…こんな男は
いやか?」

「そんな事…有るわけないでしょう
嬉しいに決まってるじゃない!」

ウンスはそう呟くと
ヨンの頚に腕を回し抱き付いた…すると
ウンスの身体が、だらりと膝から
崩れ落ち、ヨンが抱き抱える形になった

「ウンス!!如何した!」

「・・興奮して血圧上がったの
かしら…少し目眩を起こしただけ
大丈夫よ」

「大事をとらねばならぬ、テマン!
床の用意と、侍医を呼びに行かせろ」

「は、はい!」

ウンスを優しく椅子に下ろすと
部屋の鍵を開ける

「大袈裟よ…少し休めば元気になるか
ら…ふふふ」

ヨンは、ウンスの前に膝をつき
その手を握り心配そうに見上げる


直にテマンが大きな布団を抱え
戻ってくる

「大護軍!兵舎の布団では
奥方様が汚れますから、勝手に典医寺
の部屋の布団を持って来ました!」

「構わぬ、そこに敷いてくれ」

テマンが布団を敷くと、ヨンはウンスを
抱き上げ優しくおろし、その手を握ると
心配そうに見つめている



「はぁはぁ…大護軍、医仙殿が
お倒れになったとポンが駆け込んで
参りましたが、真ですか」

「ああ、すまぬが診てやってくれぬか」

侍医が息を切らし、私室に顔を出すと
ヨンは事の子細を伝える

「もう…みんな大袈裟なんだから
興奮して、一気に血圧が上がっただけ
よ」

「医仙殿、無理をし過ぎなのでは…
診脈してもよろしいか?」

「はい…」

ウンスが布団から腕を出すと
侍医は脈に触れる
ヨンは瞬きもせずその光景を見守る

「医仙殿、つかぬことをお尋ねしますが
月の物は?」

「えっ?先月はちゃんと・・恥ずかしい
事・・・まさか!!」

「はい、微かではありますが滑脈が
が出ております」

「侍医、なんなのだ!」

「ヨン…」

ウンスは驚き瞳を見開くと
身体を起こし、ヨンに向かい両手を
広げた…
ヨンは、何か悪い病ではないかと
眉を下げ、心配顔をしウンスのそばに
寄る

「きて…私・・・赤ちゃんが
出来たみたい・・」

「・・・」

「ヨン?…喜んでくれないの」

ウンスは、ヨンの反応がないことに
不安気にその顔を覗き込む

「ウンス…今一度・・・」

「赤ちゃんが出来たみたい…」

「・・赤子が出来たと?」

「うん…喜んでくれないの?」


ウンスはいまにも泣き出しそうに
瞳には、溢れんばかりの涙を溜めている

「すまぬ、驚きが先に立ち身体が
付いていかぬ…が、嬉しいに決まって
おる!!俺が父になるのだな!」

「ええ…そうよ、私は母親になるの」

漸く飲み込めたヨン
目元を緩め、ウンスの瞳を覗き込み
人がおるのも忘れ
ウンスをぎゅっと抱き締めていたが…

バシッと後頭部を叩かれ我に返る

「何をしておる!お前は大護軍ぞ
下の者がおるのだ、しゃきっとせぬか!
まったく…」

「・・・叔母上・・頭を叩くな…
脳震盪を起こし、記憶が無くなる事も
あるのだ…」

「・・ウンスの受け売りか!退かぬか」

ヨンは後頭部を押さえながら
叔母には、流石に歯向かえず渋々
抱き締めていた腕を離す

叔母が、ヨンに取って代わると
ウンスの手を取り、その瞳を見つめ呟く

「ウンス、でかした!口には
出さなかったが、この日をどれ程
待ち望んだ事か…ようやった・・」

「叔母様・・クスン」

「泣くでない…赤子に障る故・・・」

「叔母上退いてくれ…ウンスが泣いて
おるのだ、頼む」

「まったく、腑抜けにも程がある」

再びヨンがそばに寄るとウンス
「ヨン…」と一言呟き
声をあげ泣き出した


「みんな、喜んでくれてるのよね・・
私、赤ちゃん生んで良いのよね?クスン」

「あたりまえであろう」

ヨンは、その大きな手の平で
包み込むように、ウンスの涙を拭いて
やる

父上、母上
俺が親になるのです
この手で十六から人を殺めてきた
この俺が・・・
天は許して下さるのか・・

ヨンはそう思い、ウンスが泣き止むまで
その背を擦り続けていた…


「叔母上…暫し抜けるが構わぬか
ウンスを屋敷に連れ帰る故」

「ああ、王様には伝えておく
だが、お前は戻って来ねばならぬぞ」

「分かっておる、チュンソクがおらぬ
故、俺はすぐに戻る…テマン輿の用意を
頼む、俺が屋敷に戻るまで武閣氏を
屋敷に留め置いても構わぬか?」

「ああ、もとよりウンスの護衛なのだ
構わぬ」

話が勝手に進みウンスは…

「あの・・・妊娠は病気ではないのよ
だから、屋敷に戻らなくても大丈夫
なんだけど…それに長い暇を頂いて
今日出仕したばかりよ・・・」

「ならぬ!」「ならぬ」

ヨンと叔母の声が重なる

こうしてウンスは、ヨンに抱きしめられ
輿に乗り込み屋敷へと
向かったのであった



長かった・・・←私が長くしたのですが

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